音楽の力
社団法人音楽出版社協会
会長 朝妻 一郎
あけましておめでとうございます。
今年もまた、明るい兆しを語るところから始めることはできませんが、意を強くしたことが昨年ありました。
短期間にCDがたくさん売れたのです。その後も売れ続けています。それが日本のCDマーケットでは小さなシェアしか持っていない洋楽で、しかも新作ではなく、旧譜です。グループはすでに解散し、メンバーの中にはこの世を去った人もいます。
こんな条件にもかかわらず売れたということは、音楽の魅力、音楽の力によるもの以外の何ものでもありません。音楽に力があれば、ちょっとしたきっかけでも売ることができる。
ただなら何でもいい、安ければいい、無断でコピーして何が悪いという風潮はすぐにはなくならないでしょう。私たちは法制度の改善やユーザーへのPRをうまずたゆまず行っていかなければなりません。しかし、幸いなことに、むやみにコピーしていいのだろうかというある種の抵抗感が若者たちの中に生まれ育ってきていることも、各種のアンケートから浮かび上がっています。
知的財産、文化産業こそが、我が国の将来を開くものだということが、ずいぶん前から言われてまいりました。しかし、著作権あるいは著作隣接権の存続期間の延長、あるいは私的録音録画補償金制度の見直しという問題を見ても、また昨今かまびすしい権利制限の一般規定導入論議にしても、要するに著作権を制限する、権利を狭める方向にのみ進んでいるように見えます。
著作物は、日々大量に生まれています。しかし、著作者の死後50年たってなお愛される作品は誠に希少です。これら希少な人類の宝ともいえる作品を守り、広く世界に伝えていくことは、私どもの責務です。
知的財産ビジネスに我が国の将来を託すのであれば、まず、それら希少な、価値ある著作物を大事にする、敬意を払うことがまず出発点になるはずです。著作権存続期間も、補償金制度も、コンテンツの秩序ある流通も、ここから始まると考えます。
音楽の力を信じることから、新しい年を始めたいと思います。