契約と現在の制作スタイル

原盤制作者がレコード会社と結ぶ原盤契約には、供給契約、譲渡契約などいくつかの種類があり、その内容はさまざまです。原盤契約では、原盤そのものや著作隣接権の行使と、それらの対価としての原盤使用料(原盤印税)を定めます。
レコーディングには多額の費用を要しますから、原盤を制作した場合、音楽出版社は大きなリスクを背負うことになります。そこで、原盤制作も複数の音楽出版社やプロダクション、レコード会社が共同で行う例が増えています。
原盤制作は、レコード会社が専属作家を抱える専属作家制が残っていた日本の特殊事情が生み出したビジネスということができるでしょう。逆にいえば、音楽出版社に、自らの責任において、新しい音楽を世の中に送り出す積極的な展開を可能にしたということもできます。

原盤制作は基本的には以下のような手順で行われます。

  • 原盤の企画・立案

    ※原盤とは、レコード化するための完全編集済みマスターテープのことです

  • 作詞、作曲家への楽曲発注または既成曲の発掘、アレンジの打ち合わせ
  • レコーディングの準備(スタジオ、ミキサー、ミュージシャンの手配など)
  • レコーディング
  • トラックダウン
  • 原盤完成
  • レコード会社と原盤の契約
原盤とは…
「原盤」や「原盤権」という言葉は、厳密に言えば法律上の用語ではありません。「権」の対象となる「音源」のことを「原盤」と呼んでいるのです。具体的には、レコード、CD等の形で発売されることを前提に制作された「音源」が収録された録音テープ、ハード・ディスクのことを指します。通常このテープのことを「マスターテープ」と呼びます。
原盤の制作者は「レコード製作者」として著作隣接権で保護されています。法律上「レコード製作者」とは、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」とされており、「そのレコードを複製する権利を専有」しています。実際には、「レコード製作者」とは「原盤」の制作にかかる費用を出資した者を指す場合がほとんどです。音楽出版社はこのように「レコード製作者」として「原盤制作」しているのです。