ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2012年6月30日付

2012年6月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港著作権法改正案について、MPA/CASH、活動家らとグループ・ディスカッション

香港MPAと著作権管理団体CASHは、5月、2011年著作権法改正案の第二読会について、インターネットパロディー創作の擁護派とグループ・ディスカッションを行った。
ディスカッションにて、パロディー創作擁護派は、改正案で、警察は、著作権者に承認を得ずとも、政治的メッセージを含む無許可のパロディー創作者を起訴することができると懸念を表した。これに対し、香港MPAとCASHは、今回の改正案では(現法でさえ)、香港税関だけが、著作権者からクレームがあった場合に、クレームした人物が権利者であり、かつ、パロディーによる実質的な被害の証拠を提出した場合のみ、起訴に至ると説明。
結局、香港MPAとCASHは、パロディーの創作者が刑事起訴をとることに反対しているわけでないことを表明した。さらに、音楽出版社が、創作者に、特定の作品を使わないよう求めるケースもあるが、そういう場合は協力してほしいと伝えた。両者は、現段階で政府は、パロディー創作が刑事起訴の対象から如何なる場合またいかなる方法で除外されるのかについてさらなる協議が必要とのことで合意した。
一方で、香港レコード協会と、映画・複写技術・出版等著作権関連団体は、政府へ、改正について、延期せず施行するよう共同で要望書を提出。著作権関連業界団体は、大量の著作権侵害により業界が被っている損害額が膨大なことから、改正案通過を強く求めている。中でも、映画業界は、最新映画の多くが無許可でストリーミングされ、興行収益が落ちており、大きな損害を被っている。
しかし、残念ながら、改正案に反対する議員らが、議事妨害しており、この2カ月間全ての法案通過が麻痺している状況だ。改正案の審議は、7月1日以降の新体制政府に持ち越される。

東南アジア諸国でのiTunesサービススタートについて

iTunesは、6月27日に、東南アジア諸国で、サービスを開始。 該当国は、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、ラオス、カンボジア、ブルネイ、スリランカ。今回のiTunesのサービス始動は、東南アジア地域デジタル市場へのビジネス展開拡大という面で、多くの企業へ影響を与えている。また、Moovや、KK Boxといった、現地メジャー企業らも、一般の人々に、音楽コンテンツについてさらに着目してもらえると、iTunesの始動を歓迎している。
多くの音楽ファンが、iTunesサービスが始まったことを喜んでおり、各地域のiTunesストアで音楽や映画を購入することへ関心を抱いているようだ。

中国著作権法改正案延期について

中国国家版権局は、強制許諾の含まれていた著作権法改正案を延期して、公聴と再吟味することを発表した。著作権法改正案へは、AMPS(アジア音楽出版社協議会)のみでなく、MPA台湾や、他の国際団体らからも意見書が提出されており、また、中国本土の著名なソングライターらが、強制許諾は著作者人格権を侵害すると、改正案への反対を表明していた。レコード会社も、製作に多大に出資しており、その投資に対して権利が守られるべきと述べていた。

マカオから、著作権使用料分配

初めての著作権使用料分配が、CASHを通して、CASH会員や他提携団体へ行われた。マカオの著作権管理団体MACAによると、中国本土からの観光客増により、マカオでは小売業界が成長しており、店舗へのライセンス拡大が見込める。さらに、MACAは、カラオケ店へのライセンスに関しても拡大を見込んでいるが、それには、諸々の障害や、避けることのできない法的手続き等も出てくる、予見している。

シンガポール、音楽出版社・COMPASS、デジタル合意書をスタート

この数年、シンガポールでは、オンライン上での音楽の使用許諾に関して、レコード会社と音楽利用者は、ある問題を抱えていた。というのも、著作権管理団体COMPASSが定める、ストリーミングに関する権利への使用料が、デジタル・メンバーの楽曲と非デジタル・メンバーの楽曲とで異なるからだ(それぞれ2%、6.25%)。この状況と、iTunesシンガポールのサービス開始に伴い、音楽出版社らは、COMPASSと共同で、デジタル合意書をスタートした。
これにより、音楽出版社とCOMPASSは、録音権及び演奏権を含む一律使用料率を8%とする。しかし、2006年に導入された、独占禁止法により、この新規に作られたライセンスのプラットフォームに関して、関係者らはすべての関連各署と協議する必要がある。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。