ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2012年4月30日付

2012年4月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

「言論の自由抑圧」と誤解されたパロディー規制法案、誤解払拭のため権利者が協議

2011年10月付のニュースレターで紹介したが(MPA会報no.189掲載)、2011年9月に、「通信権」(Communication right to the public)を導入する著作権法改正案についてのグループ・ディスカッションが香港政府によって行われた。参加者は、香港MPA、弁護士の代表者、インターネット・フォーラムの活動家ら。ディスカッションのテーマは、インターネット・フォーラム活動家らが懸念する、刑事責任とされる「著作権侵害されているコンテンツの大量配布」の定義について。その中で、活動家らは、パロディーを刑事責任から除外することを主張した。香港MPAは、ある楽曲が他の曲と一緒に使われることについては、作家もしくは音楽出版社の自由判断であるべきと主張した。更に、著作権フリーの楽曲やパロディー作家たちと協働を希望する作家もいることを伝えた。
そして、2012年4月29日、パロディー作家らはデモンストレーションを行い、2012年5月9日に立法議会で予定されている著作権法改正案の第二読会に反対を表明した。スローガンは、著作権法改正案により脅かされる言論の自由。更に、ポップミュージックの作家グループは、facebookフォーラムへパロディーの創作支援署名レターを投稿し、CASH(香港著作権管理団体)と音楽出版社とのグループ・ディスカッションを呼びかけた。こういった反対意見により、政府は予定されている法案修正の第二読会を延期せざるを得ないだろう。
この危機的状況から、香港MPAとCASHは、緊急に会議を行い、政府による法改正案は、言論の自由が抑圧されるといった間違った印象を一般の人々がうけており、それをどうやって払拭していくかを話し合った。さらに、ポップソング作家でさえ、同じ印象を持っており、CASHとしては、そうした作家からの反発的な感情を刺激しないように中間的な立場をとり、著作者とユーザーの相互理解を望むと見解を発表した。
MPAとしては、出版社はなぜパロデイーを例外としない立場を主張するのか説明した。もし、パロディーを例外とすると、著作物のあらゆる改作、盗作、編集、シンクロナイゼーションまでもが例外となり、著作権の保護に関して誰も想像できないような無秩序な状況となるだろう。MPAとCASHは、近日中に、作家とのグループ・ディスカッションを行い、今回の法改正の必要性を明確にするとともに、著作権保護と言論の自由の区別についても明らかにする。

中国

「包括的許諾の範囲は限定すべき」- 著作権法改正案にAMPSがコメント

2012年4月1日、中国国家版権局は、著作権法改正案を発表した。改正案は、強制許諾の設置と、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)の法的責任の除外を含む。現行の著作権法は、もしユーザーが利用したい著作物の著作権者が判らない場合は、MCSC(中国著作権管理団体)へいくらか支払えば是認される。どういうわけか、この制度は誤解され、ユーザーは、MCSCへ支払えば、著作権者の許諾を得なくても、使用に関して許諾されるのだと認識されている。
今回の改正案では、レコードが出版されて3カ月の期間が過ぎると、どのユーザーもMCSCへ3.5%の法定録音使用料を支払えば、その著作物を利用してレコード製作できるとしている。AMPS(アジア音楽出版社協議会)は、国家版権局へ現行システムは、非効率で、作家と出版社の使用料の徴収と分配について透明性が無いことをここ何年も主張してきている。さらに、この改正案は、著作権者が複製を許諾することの判断への妨げともなるだろう。著作権者の情報を容易に判るようにするには、CASHが使っているDIVAのような集中楽曲情報システムが取り入れられるべきである。AMPSは、包括的な利用許諾は、放送権、演奏権、映像製作物の演奏権に限定すべきとコメントしている。
インターネット上での法的責任に関して、今回の改正案では、ISPが、著作権管理団体から適切な許諾を得てユーザーがコンテンツをアップするプラットフォームを提供している限り、著作権侵害がみられた場合でも、該当コンテンツを外せば、ISPに刑事責任はないとしている。これに対し、AMPSは、包括利用許諾を受けて事業を行っているISPには著作権侵害について責任義務があるとコメントしている。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。