新年にあたって〜音楽がその力を発揮するために〜

会長 谷口 元
一般社団法人日本音楽出版社協会
会長 谷口 元

あけましておめでとうございます。
新しい年のはじめに、過ぎた年のことから始めなければならないのは残念ではありますが、担わなければならない課題とその重みを確認するところからこそこれからの道が開けてくると思います。すでに10カ月が経ちますが、東日本大震災はいまだに行方不明者が3000名を超えています。しかも、福島原発の処理にはこれから数十年を要するといわれ、被害の影響はこれからさらに深度を増す可能性もあります。わが国にとって第二次世界大戦以来の深刻な被害だったと言えると思います。そうした中で当協会は、震災発生直後にささやかではありますが義捐金を拠出し、また、ドイツ音楽出版社協会も5月に開かれたフランクフルトでのミュージック・フェアで13,000ユーロの寄付金を集めてくれました。
秋には、音楽団体5団体による「東日本大震災復興祭2011」に参加し、被災地の復興にお役に立つことができたと思います。幸いにも、私たちは音楽出版ビジネスという、財産的な利益を生み出すとともに知的な、文化的な貢献をすることもできる仕事をしています。海外に対しても、私たちのビジネス上の努力が、日本のイメージを高め、魅力をプロモーションすることにつながります。ともすれば、著作権に対する風当たりが強いといわれる時代ですが、いまこそ著作権の価値を再認識する必要があります。音楽がその力を発揮し、経済的にも文化的にも国の内外を問わず人々の幸福に貢献するには、その基盤となる著作権の強化が不可欠です。これまで同様、とりあえずは①私的録音録画補償金制度の強化拡充、②著作権及び著作隣接権存続期間の国際水準への延長、③海外市場への展開、④ネット上の違法行為の撲滅―の4点を主要課題として取り組んでまいりたいと思います。