ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2015年12月1日付

2015年12月1日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

中国人観光客の影響

 香港国内の小売産業は、中国本土からの観光客の減少により売上が下がっています。香港国内では中国本土の観光客への反対感情が目立ちます。小売業の業績は昨年度に比べると3.9%落ち込んだと報道されています。国内の景気後退に伴い、いくつかの音楽配信業者は、著作権フリー音楽を使用している店舗に目を向けました。CASHは唯一の音楽出版社団体ですが、著作権フリーの音楽はレコード会社との使用料の支払いの仕組みを壊すことになります。

Apple Musicの香港進出

 6月初め、Apple Musicが遂に香港に進出しました。香港だけではなく、東南アジア諸国の多くを同時に網羅しました。現地の音楽ストリーミングサービス会社の何社かが現地の歌手やコンサート・ライブとコラボしました。LIVEストリーミングに「月額5ドルで」と要求する会社さえあります。

モンゴル

MOSCAPの徴収状況

 モンゴルの演奏権管理団体MOSCAPは、モンゴル国内での自動ライセンシングシステム導入についての交渉のために香港の音楽出版社を訪問しました。
 iTunesがモンゴル国内に進出して以降、以前よりもたくさんのユーザーが海外の音楽やエンタテインメントに触れる機会が増えた件についてMOSCAPは言及しました。そのため海外楽曲と国内楽曲のレパートリー、特にカラオケや着メロなどデジタル音楽のマーケットが刺激されました。
 MOSCAPは2011年1月に設立された団体で、設立当時からCISACの仮メンバーでした。CISACは約270団体が加盟し、15社が理事社からなっています。設立当初は、携帯着メロの徴収を中心に活動していました。着メロの使用料の徴収は全体で130,000USDが見込まれます。MOSCAPは次のステージとしてカラオケやTV、デジタル配信などの徴収に踏み込んでいます。将来的には他の管理団体や音楽出版社との協力をさらに強くして徴収を強化していくことを目指しています。

タイ

タイ国内の違法DL対策

 ここ10年以上、タイ国内の音楽出版社はIFPIの現地オフィスTECAと協力して違法CDの摘発対応をしてきました。タイには相当数の違法なカバー楽曲があふれていると思われます。これらは当然CDの売上に悪影響を及ぼします。このような違法音楽ダウンロードに対処するため、DIP(知的財産局)は法令による取締りの強化やTECAと協力して違法音楽ダウンロード撲滅を働きかけています。法律の下では、TECAは違法DLのユーザーを警察に届け出ることができます。しかしながら、悪徳業者の一部は著作権の法律の抜け道に気付き始めており、発見してもあっとゆう間に逃げ去ってしまします。
 音楽著作権の不正業者の報道でタイ国内の多くの音楽サービス会社は、使用料が都度発生しない、使用料込みこみの音楽サービスの利用を売り込むきっかけになりました。主要なチェーンの小売店では、音楽の違法利用のリスクが低いこのサービスにシフトつつあります。TECAはこのような動きもあり、音楽出版社とワンストップで著作権処理を可能にするシステムの構築を余儀なくされるだろうと感じています。

インドネシア

インドネシア国内の著作権団体の動き

 KCI(著作権管理団体)はCISACの会員から離脱しましたが、田舎にいる作家を対象に活動しています。KCIが音楽出版社や関係団体のサポートなしに存続するためにはそれなりに方策が必要です。
 一方でWAMIは全国放送のTVやラジオ番組に焦点を当てて収入源の確保を考えています。国内のカラオケ産業は非常に重要です。WAMIとインドネシアの録音協会ASIRINDOはカラオケの使用料に関して音楽出版社との協力を求めています。ASIRINDOのもうひとつの戦略は、より合法の音楽を世の中に普及させ、低クオリティの違法音楽利用をカラオケマーケットの中から排除することです。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。