ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2012年2月29日付

2012年2月29日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

広告に歌詞の一部を掲載

バス、タクシー、地下鉄といった公共交通機関に、新旧あらゆる広東ポップソングの歌詞の一部(1~2フレーズ)だけが書かれている広告が登場した。広告には、企業名「Soliton」 とiknowthissong.orgへのリンクが掲載されている。
この広告は、多くの人々の関心を惹き、香港のソーシャルネットワークのフォーラムで話題となっているが、プロの作詞家らから、不満の声が上がった。彼らの誰一人として、さらに音楽出版社さえも、広告に歌詞の一部を使用することに対して適切な許諾申請を受けていなかったからだ。これを受け、音楽出版社は、直ちにSolitonと交渉を開始し、印刷広告に利用された歌詞の一部に対して遡及して許諾申請するよう申し出た。Solitonは、CASH(香港音楽著作権協会)とのデジタル印刷包括契約に対して誤解があったとし、歌詞の一部を摘出して使用し、楽曲を宣伝することは、プロモーションと認識していたという。
ビジネス拡大にともない、Solitanと音楽出版社間で、既に使用されている歌詞と、今後の使用についてのライセンス契約が同意すると予想される。
Solitonのプラットフォームは、3月末にはフル稼働となる。基本機能として、音楽ファンは、他のユーザーと楽曲についてコメントを交換でき、また、歌詞の一部をグリーティングEカードとしておくることが可能。さらに、ユーザーは、他の登録ユーザーやセレブリティ、アーティスト、ミュージシャンのお気に入り楽曲をチェックすることができる。また、推測ゲームや 楽曲を贈る機能もあり、登録料は、月額HK$49(約US$6.3)。

TVB、CASHへ(包括)放送使用料遡及同意

昨年11月、香港最大のTV局TVBは、HKRIA(3大国際レーベル、ソニー、ユニバーサル、ワーナーにより組織された)アーティストのTVB番組出演および録音物の放送使用に関し、同3社と和解した。その後、遂にTVBは、CASH(香港音楽著作権協会)と2010年、2011年の遡及支払いについて同意した。
以前、TVBは、HKRIAと交渉決裂した2009年12月以来、それらの楽曲はほとんど使われていないため、CASHへの放送使用料額を下げるべきと主張していたのだが、暫定的な和解として、TVBとCASHは2010年と2011年の放送使用料の一部の支払いについて合意した。

中国

MCSC、テレビ局団体と包括許諾に向けた調整に合意

2012年1月12日、MCSC(中国音楽著作権協会)は、新たに設立されたテレビ局団体と、包括許諾に向けての調整を行うことについて合意した。
昨年、政府が発表した放送使用料の課金スキームに従い、MCSCは、初めて、中央テレビ局(CCTV)と放送許諾を合意。だが、その後、MCSCは、国内各地方によって市場の状況が異なり、標準生活費にも差異があることから、どの地域でも同一の条件では難しいという現状に直面していた。これをふまえ、テレビ各局は、各地域に適切なライセンス契約を調整できる窓口として、団体を発足させた。この団体は、都市・地方含め、32のテレビ局が会員とのことだ。

タイ

タイの音楽出版社は、MCT(タイ音楽著作権協会)が、広告代理店に、テレビで流れたジングルに、放送使用料の支払いを要請していることについて、懸念を表明した。
MCTは、テレビ局と長期にわたり放送使用許諾契約について議論してきたが、テレビ局が関連する放送使用許諾の義務は番組制作会社にあるとした。
これに対し、音楽出版社は、放送許諾を取得する義務は、放送事業者にあると主張。たとえば、もしテレビ局がそのような政策を明示していたら、レコード会社や映画会社はテレビで放映されるすべての映画や音楽ビデオの権利をクリアすべきということになるのだから。
MCTは、テレビ局は、特定の制作会社にそれぞれの放送する権利について要請するのでなく、放映している全てのプログラムに対する包括許諾契約を締結すべきであり、現在、テレビ局と包括許諾契約について討議していると主張している。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。