ICMPニュース vol.13 (2012年11月22日更新)

WIPOが著作権問題について各界関係者の議論を提唱

アゼルバイジャンのバクで11月6-9日に開催された、今年のインターネットガバナンスフォーラムで、WIPOの文化・創造産業部門事務局長補佐のTrevor Clarke氏は、デジタル時代の著作権問題に備えるため、民間部門や市民社会を含む、各界関係者間で議論がなされるべきだと主張した。

WTOが技術革新と開発における知的財産について思案

WTO(世界貿易機関)評議会の知的財産の貿易に関する会合で、代表団は技術革新と開発における知的財産権の役割について議論した。後発発展途上国のグループは、TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に沿った国内法改正の実施期限を延長するよう求めた。現在の期限は2013年7月1日となっている。

EU-アメリカ間の自由貿易合意について注目

11月9日ダブリンで、Karel de Gucht EC委員・通商担当は、EU-アメリカ間の自由貿易合意について、交渉を開始することは重要であり、急いで着手するべきだと強調した。
「アメリカと貿易関係を深めることは多少の犠牲と妥協はあるかもしれないが、我々にとって利益になるということを、ヨーロッパの人々に納得させるべきである。同時にビジネスを行うにあたり、ヨーロッパは最も興味深く、信頼できるパートナーであるとアメリカに確信させることができると信じている」とGucht氏は述べた。

カナダ新著作権条項施行、MPAから反対意見

11月7日、著作権近代化法であるC-11法案の消費者条項が施行された。 この法案で、非営利のパロディや風刺などに対して、版権のあるコンテンツの利用が可能になり、また入手したコンテンツを他のデバイスにコピーすることもできる。
この法案はまた、権利者から著作権侵害の報告があった場合、違法なダウンロードやコンテンツ利用をした疑いのあるユーザーに対して、インターネット接続業者が通告することを求めている。これについては、同条項をバランスのある効果的で有効な方法で実現するべく遅れていたものである。
このニュースに関し、カナダ音楽出版社協会執行役員のCatharine Saxbergは、「政府はC-11法案で、消費者寄りの点についてはよく考えているが、この法案に含まれているクリエイターや権利者の問題については、あまり触れていない。この内容では、クリエイターや権利者の収入源が一層脅かされてしまう。我々は引き続き問題提起し、C-11法案が与える悪影響について、そしてカナダにおける創造産業の価値と重要性に政府が気づくことを期待する」と述べた。

アメリカ、インターネットラジオ使用料紛糾

インターネットラジオサービスのPANDRAはASCAPをライセンス契約の価格が不当であるとして、提訴した。 PANDRAは435,000のグループメンバーで制作されているすべての曲をカバーする包括的なライセンス価格を求めており、現在の価格では採算が合わないと主張している。
これに対し、NMPA理事長のDavid Israelite氏は、「PANDRAのビジネスモデルは、ソングライターの創造性が大いに寄与しており、ソングライターや音楽出版社に支払っているわずかばかりの金額を減らそうとしているのは、おかしい。提訴するということは、PANDRAがさらに金儲けをしようしているようなものだ」と述べた。
関連したニュースでは、NMPAと他関連団体は、全米著作権使用料委員会で規定されたインターネットラジオサービスの使用料を定めるインターネットラジオ公正法の草案に反対する書面をアメリカ連邦議会に送付した。

中国著作権法の三度目の改正案が完成

中国国家版権局は著作権法の三度目の改正案が完成し、今年末までに国務院に提出されるだろうと発表した。関係者によると、草案は90条からなり、現行のものより29条項多く、より著作権者の権利を保護する内容となっている。
今改定案での変更は作品転売から得る利益に対し、アーティストの権利がより保護されており、著作権侵害 についての罰金が厳しくなっている

オーストラリア、使用料分配額が13.9%増加

オーストラリアの著作権管理団体、APRA/AMCOSは、前年度に比べて、使用料の分配が13.9%増加したと発表した。この増加は主に、録音権収入の増加によるものである。

インド、IMI がインドの情報技術規定について申し立て

IMI(インド音楽産業)は、アップロード者に通告することなく、無許可で使用されているオンラインコンテンツを除去することを認める、インド情報技術規定を支持する申立書をKerala 最高裁判所に提出した。

国境を越えた事業を奨励

Micher Barnier EC委員・欧州内部市場・雇用担当は、EUの単一デジタル市場の著作権についてのCEPS デジタルフォーラム調査特別委員会の発足会で、できるだけ多くのEU圏住民がコンテンツを利用できるようになり、文化や創造における投資が継続するような著作権構想が必要だと述べた。

ロシア、裁判所がSNSの訴えを棄却

ロシアの最高商事裁判所は、ソーシャルネットワークサイト、vKontakteによる訴えを棄却し、インターネット上で著作権侵害を促進したとして、Gala Recordsに賠償金を支払うように命じた。
2010年10月にGala Recordsのメンバー、SBA プロダクションとSBA音楽出版によって告訴されたのに続き、2回目となる。最初のケースでは、2012年1月にGala Records側はvKontakteに勝訴している。
このことは、無認可のウェブサイト上で著作権侵害が蔓延している問題に対し、国が取り組む姿勢があることを示す、画期的な判決になった。

イギリス、コンテンツマップ発表

11月6日、知的財産連合はイギリスの消費者に音楽、テレビ番組、映画、電子書籍や他のオンラインコンテンツにアクセスできる、合法のウェブサイトやシステムについて情報提供するコンテンツマップを立ち上げた。www.thecontentmap.com/

ICMPとIMROが欧州議会でアピール

欧州文化の伝統を維持は、作曲家、作詞家、実演家がその作品からの収入で生活し、創作できることによってのみ可能である。しかし著作権侵害によって、クリエイティブ産業だけで2015年までに、120万の仕事と2400億ユーロの小売収入の損失が あると予測されている。
クリエイティブな作業に関わっている人々に注目を集めるため、11月13日、ICMPとIMRO(アイルランド音楽権利団体)は欧州議会で前例のない演奏会を開催した。
アイルランドの著名な作曲家である、Keith Donald氏も出演し、「音楽・映画・新聞・文学・ソフトウェアなどに従事しているクリエイティブな人々は、今や自分たちの作品がとても簡単に盗まれており、クリエイターへの敬意が欠如していると感じている。 クリエイターの権利を弱めない範囲で規制や技術革新を認める世界的規模での戦略が必要だ」と述べた。
ICMP事務局長のGer Hattonは文化・創造部門の重要性を強調し、「これらの部門はヨーロッパ経済と文化に大いに寄与しており、850万人の雇用創出し、EUのGDPの3.3%-4.5%を生み出している」と述べた。
また、著作権の保持についても触れ、「著作権は創造と技術革新をサポートするため、また国境を越えて品質の高いコンテンツにアクセスできる、近代的で効果的な手段であるべきである」とも述べた。