ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2020年8月31日付

2020年8月31日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

コロナウイルス第3波の影響

 前回の6月レポートの時の感染ゼロの状態だったのとは対照的に、7月の初めにコロナウイルスの第3波により急激な増加が復活した。それは、国境での緩い管理が、海外からの急増に対応できなかったことによる。経済のストップも復活した。店やレストランは、第3波が第2波より3倍も強いことがわかったため、近い将来に通常の営業を再開できる可能性がないため、閉鎖し続けている。30~40%が閉店になった。

 ホテル関係では、生き残りのために、部屋でのビュッフェ、部屋での仕事など、さまざまなプランを用意できた多くのホテルが営業収入を維持できた。デジタルによる配信ライブ・コンサートビジネスは回復しているように見えるが、従来のライブ・コンサートの収入との大きなギャップを埋めることはできなかった。最近の統計レポートによると、ネット利用での消費は、料理、ゲーム、ドラマ、映画においては順調。演奏権使用料は年末までに50%近く低下すると予測されている。

中国

タレント・ショーとTV番組制作は通常ペースに

 国境の継続的で厳格な管理により、国内のウイルス感染症例はゼロまたは数例と記録されている。経済は完全に回復した。TVコマーシャルと映画のシンクロ・ライセンス案件が増えている。14日間の隔離措置を講じる必要があるにもかかわらず、香港と台湾のかなりの数のミュージシャンとプロデューサーが本土に戻った。タレント・ショーとTV番組制作は通常のペースにもどりつつある。シンクロ使用料収入は元の健全な状態に戻って来ている。

台湾

景気は着実に回復

 中国とは別に、台湾はコロナウイルスと闘うために、厳しい国境管理を行っている。第3波は台湾に影響を与えなかったので、景気は着実に回復している。コンサートやさまざまな小売業界は、急速に通常の営業を行えるまでに回復している。演奏権使用料収入は、他国と比較して、深刻な打撃を受けなかった可能性がある。

 デジタル市場に関しては、MPAはMUSTと共同ライセンスに向けて協議している。

マレーシア

セントラル・ライセンスの義務化の解消とその影響

 過去数年間、演奏権のライセンスに関して、政府の許諾団体のMRMを通じてライセンスすることが条件だった。政府は昨年、このようなセントラル・ライセンスの義務化が解消されたことを発表したが、MACPが業務再開するのに時間がかかった。政府の強制的な長期自宅待機政策のため、MACPは権利者への使用料分配を年末にかけて数か月間遅れることを発表した。

タイ

多くのデジタル配信サービスが大きく成長

 Facebookのストリーミング・サービスは、東南アジアでタイを最初のローンチ場所として選んだが、Facebookと著作権団体と出版社とのライセンス契約に関してはまだ交渉中。自宅待機政策の結果、多くのデジタル配信サービスが大きく成長した。特にNetflixのようなテレビや映画の配信、現地のAISやTrueといったサービスが好調。さらに、YouTubeとLineは高いアクセス数を得ている。Facebookの上陸は、デジタル音楽市場の新たなパイになることは間違いない。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。