ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2020年10月31日付

2020年10月31日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

“Music Must Go On” キャンペーンを実施

 MPA香港は、新型コロナウイルスによる持続的な不況と長期的な影響を鑑み、テレビの放送使用料における従来の包括契約を今年と来年に関しては継続することで、香港の各テレビ局と合意に至った。売上の減少により広告収入の落ち込みに直面しているテレビ局があることを受けたものである。

 一方でホテル業界は、近場の宿泊施設で休暇を過ごす「ステイケーション」が継続していることで、好調に推移している。10月の大型連休においては、90%という高い客室稼働率を記録した。新型コロナウイルスの感染者数は少なくなってきているが、海外旅行の可否が当面の間予測できない状況のため、多くの人が休暇を近場の宿泊施設で過ごすようになっている。

 台湾の有名なアーティストであるジェイ・チョウ(周杰倫)は、2021年4月にセントラル・ハーバーフロントにてコンサートを6回行うと発表した。主催者は、一般来場者の安全に配慮し、健康管理にもきちんと対応できると確信しているとのことだ。

 IFPI香港は、10月中旬に “Music Must Go On” というキャンペーンを開始した。このキャンペーンは、Create HK(地域文化の発展を推進するために香港政府が設立した支援機構)によって運営され、Hong Kong Recording Industry Alliance (HKRIA) とMPA香港が協力している。IFPIとHKRIAの会員、またはこれらの団体から認められたアーティストが、1980年代から2010年代にリリースされた香港の歌謡曲のカバーを制作するために企画されたものである。対象の時期は、レコード業界の全盛期を考慮して決定されている。審査に通ると、キャンペーン全体で120曲という上限はあるが、カバーの制作にかかった費用を請求することができる。キャンペーンは好評で、香港のレーベルやインディーズのアーティストは次々とミュージシャンに制作依頼をしている。本キャンペーンに協力するため、MPA香港や会員社は、著作権使用料を低くすることに同意した。

中国

中国の著作権法における「配信権」の取扱に対し、海外著作権団体から指摘

 現行の中国の著作権法における配信権の取り扱いが、演奏権等 (Performing rights) と録音権等 (Mechanical rights) を区別していないと海外の著作権団体から指摘があり、海外の各団体は、中国の音楽出版社に対して直接の許諾と使用料の徴収を認めるよう提案したことが明らかになった。この動きは、中国だけでなく東南アジア諸国において、まだ整備されていないデジタルのライセンスビジネスをさらに複雑化させることにつながる。許諾を受ける側としては、誰に使用料を払うべきなのか、また他に支払うべき団体があるのかという懸念が増すことになる。しかし、中国国内と海外での考え方の違いにより大きな反発が起こることが予想され、ほとんどの中国企業は、複数社から使用料の請求が行われることに対応できないと思われる。

マカオ

経済不況の中、作家やアーティストへの支援活動を実施

 主要の観光産業の落ち込みにより経済への大きな影響があったにも関わらず、著作権管理団体のMACAは作家に多くの曲を制作してもらうべく、オンラインの作曲コンテストを実施した。さらにMACAは、若い世代に著作権に対する意識を啓発するために高等学校でセミナーを開催し、また音楽アーティストに対しては助成金プログラムを開始した。

フィリピン

政府によるデジタルライセンスの整備

 公的な認定を受けた国内の著作権管理団体だけが、フィリピンにおいて著作権の許諾を行えるとして、政府は今年の初めに周知を図った。政府としては、国内におけるデジタルのライセンスが無秩序に行われており、新たな収益が今後発生したとしてもそれに課税できないことに気付いたからである。さらに政府は、デジタルに関連する全取引を、VAT(付加価値税)の対象とすることを提案している。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。