ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2020年2月29日付

2020年2月29日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

新型コロナウイルスにより発生した災難

 2019年6月以降、長期にわたる社会不安により、深刻な打撃を受けていたが、1月下旬には新たにウイルスによる災難が発生した。政府の省庁とほとんどの会社は、非常に伝染性の高いこの病気に対する公衆の接触を最小限に抑えるためにオフィスの業務を中断した。一部のオフィスはスタッフ間の接触を減らすためにシフト勤務で対応した。CASHとほとんどの音楽業界の会社も同じように従った。多くのイベントやコンサートは不安のため、中止または延期された。小売業や観光ビジネスの収益は激減した。小売店の約30~40%が数か月間一時的に休業するか閉鎖されている。

演奏権使用料の大幅な減少を補うデジタル・ビジネスの成長

 演奏権使用料が2019年から2020年にわたって大幅に減少すると予想される。反対に、多くの人が家に留まったため、デジタル・エンターテインメントやオンライン・ショッピングビジネスは急激な成長で活気づいている。HKTVモールと名付けられたHKTVの子会社(2015年に無料放送のライセンスを取得しようとトライしていたが失敗)は、オンライン販売ビジネスで大きな成長を遂げた。その売り上げと収益は香港を代表するテレビ局TVBをも上回っている。デジタル・ビジネスに関して、YouTubeとNetflixは視聴者と有料会員の数を大幅に増やしている。結果として、これらすべてのデジタル・ビジネスの成長が演奏権収入の大きな損失を補っている。

中国

ウイルス問題での大きな危機と歌手たちの支援

 ウイルス問題は、国中でとても大きな危機になっている。政府は都市間の移動人数を大幅に削減した。多くの官公庁や商業施設もオフィス業務を停止した。MCSCはスタッフに当面は在宅勤務をするように要請した。多くのテレビ、映画、音楽の制作も在宅勤務状態のため一時停止または縮小されている。最前線の医療チームを元気づけるために、多くのヒット歌手が感謝のメッセージを届けるために新曲を作った。ジャッキー・チェンはジェイ・チョウ作曲の“Wait, after the wind and rain”の歌で支援、GEMも“Angels”を作曲し支援した。

台湾

小規模コンサートの増加によるライセンス処理の問題

 コンサート主催者が、アーチスト自身で演奏権使用のライセンスを権利者から直接受けるように要求して行われる小規模のコンサートが増えている。
 これにより、著作権団体、音楽出版社や海外の音楽出版社は、これらのダイレクト・ライセンスがアーチストにより正式に調印されているかどうかを確認するための面倒なクロス・チェック作業が必要になった。もうひとつの懸念は、こういったダイレクト・ライセンスが政府認定のCMO(著作権管理機関)を通して行われる通常のライセンス処理の迂回問題になるかどうかという点である。これが、公的な演奏使用ライセンスを発行する際に、地方のCMO認定に対するIP(知財)事務所による法定許可付与になるのかどうかという議論になった。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。