ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2020年4月30日付

2020年4月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

トップ歌手たちの政府へのサポート

 4月中旬、トップ歌手数人がテレビやソーシャルメディアで生放送を行い、国民を元気づけるとともに、ウイルスと闘っている医療チームに敬意を示した。その生放送は、医療チームへ捧げたもので、トップ歌手たちの政府へのサポートとしての行為であったにもかかわらず、結果として政治的な道具になってしまったようだ。40代半ばから60代までの人々にとって、これらの生放送は広東ポップ・ミュージックの黄金時代がどのように自分たちの文化に根ざしていたか、また彼らがどのように街作りをしてきたかを思い出させるものであり、これらは昔の広東ポップ・ヒット曲とその歌詞の中に反映された。

政治情勢がTV市場に及ぼす影響

 その政治情勢はさらにTV市場にも見られる。TVBは脅迫されていることに対し、また広告主も脅威にさらされていることに対し裁判所に法的な訴えを行った。多くの広告代理店や大きなブランドのクライアントは、TVBをサポートするための広告を打つなと警告された。音楽のTVコマーシャル使用にも影響を与えている。しかし、一部の団体は政治闘争に巻き込まれることを望んでいない。TVコマーシャルは50%以上減少したと言われている。

包括ライセンスの契約の更新

 社会的距離を守るために、MPA香港は、進行中のライセンス事業を維持するため、会員が共同で包括ライセンスに参加してきた包括ライセンスの契約の更新について、すべての会員に代わってサインすることをMPA香港に承認することに関し協議した。同様の状況でCASHは理事会でいくつかの重要なライセンス事項や意思決定において、メールや電子サインで解決策等を確認することに同意した。ライセンス交渉では、MPA香港とCASH双方が、2019年と同じ条件のライセンス料金を維持するつもりだが、深刻な影響を受けている業界のライセンシー(使用者)を支援するために特定のディスカウントをする必要があるだろうと認識した。

中国

ライブ・コンサート、映画ビジネスとデジタル・ビジネスの現状

 ウイルスの状況は抑制されているようで、国内旅行と商業活動の制限は回復しているとはいえ、ライブ・コンサートと映画ビジネスは、北と南の国境を接する都市からの感染が発覚したため、年末に向けての計画を立てることは依然として不透明である。一方、デジタル・ビジネスは5G通信インフラに対応しているので、特にオンライン・ゲームでエンタメ力を発揮している。強化された5Gでより鮮やかで、インタラクティブ性に富んだオンライン・ゲーム コンテンツに対応するために、一部の事業者はより多くの音楽を必要とし、よりアップテンポで活気のある曲や、対照的に雰囲気のある曲を求めて音楽出版社にコンタクトしてきている。

国立著作権局が知的財産条例の法改正案を提出

 国立著作権局は、知的財産条例の法改正案に関し、議会に改正案を提出した。提案事項は、オーディオ・ビジュアル作品(映画など)に対するライセンスに焦点を合わせている。現在の著作権法の定義では、視聴覚作品の制作者が主な権利所有者とみなされている。ポップス曲のような一部の著作権は、出版社がオーディオ・ビジュアル作品の音楽の著作権を所有している出版社のライセンス範囲だが、他の著作権がオーディオ・ビジュアルにどのように関係するかはあいまいである。音楽の著作権における出版社の権利に加えて、プロデューサーや脚本家などの一部の当事者がオーディオ・ビジュアル作品の利用から使用料を請求したり、使用料を受け取る権利があるかどうかが提起された。著作権局は、この改正はライセンサー、ライセンシー及び一般市民の利益を保護し、バランスを取るべきであるとした。

フィリピン

出版社とFILSCAPがデジタル・ライセンス協力に関する契約を締結

 いくつかの出版社は、著作権管理団体FILSCAPと共同でのデジタル・ライセンス協力に関して契約を締結した。これにより、FILSCAPはデジタル事業者にライセンス許諾し、集団ライセンスの実施に関する法律に準拠した包括的なライセンサーになる。また、この提携は、デジタル事業者がライセンス処理をすることにより多くの事業者をデジタル市場に引き付けることでビジネスを拡大させるための重要な一歩になった。

マレーシア

MRMのすべての権利業務をMACPに移管

 政府機関の最近の変更により、政府指定のライセンス許諾機関MRM(MACP、レコード協会のRIM、実演家団体のPRISMに対する演奏権の取り扱い機関)も変更された。MRMはすべての権利をMACPに戻した。これによりMACPは以前の放送局や主要クライアントとのライセンス契約を元に戻すことになった。過去数年に渡る録音権と実演家の権利の間の議論のため、MACPの演奏権使用料収入は影響を受けてきた。MACPとその会員は新しい決定を歓迎しており、ライセンス発行によりビジネスが回復することを望んでいる。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。