2021年8月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
ViuTVの人気オーディション番組が業界に与えた影響
香港のテレビ局ViuTVのサバイバル・オーディション番組からデビューした2組の男性グループ「Mirror」と「Error」が、数ヶ月間にわたる大規模なテレビ及び街頭広告が実施された結果、エンタテインメント業界で大きな成功を収めました。その影響は、配信プラットフォームである「ViuTV」アプリの急激な利用者増をもたらし、アジア2位の「Netflix」を超え、1位の「Disney+(ディズニープラス)」まであと一歩という人気になったほどです。また、このムーブメントは、他のテレビ局がより多くの音楽番組やオーディション番組を制作するようになるなど、業界に多大な影響を与えました。一方、香港の主要局であるTVBは、ViuTVのシェアの急拡大に脅かされつつも、以前成功を収めたオーディション番組「STARS Academy」(原題:聲夢傳奇)の新シリーズを放送開始しました。
新型コロナの打撃を受けたカラオケ最大手Neway
8月初旬、カラオケチェーン最大手のNewayは、長期に及ぶ新型コロナウイルス感染症による業績低迷により、会社を存続させることが困難との理由から、会社を解散することを発表しました。しかしNewayは、国内外の3つのレーベルから数か年にわたる原盤使用料について訴訟を起こされている最中でした。Newayは使用料の支払いを決断し、この問題の解決のために6,300万香港ドル(約800万米ドル)を支払いました。
コロナ禍に生まれたニューノーマルの成功体験
香港政府が実施した、消費促進のためのクーポン配布キャンペーン(市民1人につき約640米ドル分の電子マネーが支給される施策)は、小売市場、特に食料品や書籍などの即売会や、夏のコンサートなどの売り上げに大きく貢献しました。こういった即売会やコンサートでは、健康管理用の追跡可能なQRコードの登録やワクチンの接種証明が義務付けられており、そういった厳しい管理体制の結果、この数か月間は新型コロナウイルスの新規感染者をゼロに抑えることに成功しています。こういったニューノーマルにおける成功事例を踏まえ、今秋は多くのコンサートやライブが開催される予定です。この流れは、市民がワクチンを接種することの動機にも繋がり、もう1つの恩恵を作ることにもなりました。
中国
配信企業の寡占状態の解決に向けて
中国政府はついに、国内の主要な配信企業に対し、市場の寡占をもたらすような独占的な権利行使をしないよう通達を行いました。この通達は、エンドユーザーに対して各社の競争が促進されるよう、寡占市場に風穴を開ける措置だったにも関わらず、権利者側は引き続き独占的にライセンスすることができるのか、もしくは独占的に許諾することについて何か文言を残せるのかどうか不安になっています。「独占」という言葉は、ビジネスで扱う際、大変注意を要するものです。また、エンタテインメント業界において、大きな収益が発生しているにも関わらずきちんと申告がされていない可能性があるということで、
政府は業界各社の税務調査をより強化するようになりました。
オンラインゲーム・IT業界に対する規制強化
また政府は、10代の若者を夢中にさせ、悪影響をもたらすようなオンラインゲームについて、警告を通達しました。主要なオンラインゲームの会社やその関連企業は、若年層の健康に留意をしたコンテンツ制作をするよう要請されています。また、ネット上に溢れる膨大な数のコンテンツやメッセージ、特に発信力のあるKOL(キー・オピニオン・リーダー)からの影響を受けさせないようにする目的で、IT業界の様々なセクターが監視されることになりました。今後1週間以内に、この方針に影響を受けるIT企業は、株価の大幅な下落に見舞われることでしょう。
フィリピン
音楽出版社と著作権管理団体が連携し、利用促進と負担減へ
フィリピンの音楽出版社と著作権管理団体であるFILSCAPは、Spotifyとの契約締結に成功した後、より多くのデジタルサービスにライセンスをすることができるよう、連携を強めています。この動きは、出版社が権利を持つ楽曲と著作権団体が管理する楽曲の両方を著作権団体が一括で許諾できるようにするもので、団体が自国で楽曲の許諾を行うに足りる権利を有するためのものです。これは、出版社と著作権団体の双方にとって新たな一歩を踏み出すこととなり、配信サービス側にとっても煩雑な契約と管理の作業から解放されることになります。
暴走したファンと音楽出版社の間で起きた事案
フィリピンのいくつかの音楽出版社では、この2か月の間、様々なアイドルのファンクラブから楽曲の著作権侵害に関する苦情が多く届いています。これら苦情の多くは、国外もしくはアジアで制作された楽曲のローカルカバーに関するものでした。当初いくつかの事案では、出版社は即座に主要なウェブサイトに削除要請を行い、対応していました。しかし、アイドルのファンたちは、このような無許諾のカバー楽曲が削除されたことに気付くと、出版社に対し、さらに様々なインターネットのリンクを削除するように繰り返し要請してきました。ここで出版社は、これらファンクラブの行動の目的について、疑問を抱くようになります。一部の出版社は、あるファンが専門的知識を持ち、具体的な著作権情報と出版社の担当窓口の情報まで送ってきていることに気付きました。そういったファンたちは、特定の歌手やユーザーのグループを削除のターゲットにしているようでした。出版社はこのような実情に気付き、恣意的な削除依頼を受けるための企業として利用されないよう、注意喚起をすることとなりました。