2021年6月30日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
演奏権等使用料の減少と配信使用料の増加
香港の著作権管理団体CASHは、昨年の新型コロナウイルスの影響のため、7月初旬に分配される演奏権等の使用料が例年と比べ著しく低い金額になると会員に通達しました。2019年分と比べ、約50%の減少となる見込みで、主にコンサートや観光業、小売業からの収入の落ち込みが大きいようです。しかし幸いなことに、この顕著な落ち込みは急成長を遂げた配信関連サービスによって相殺されています。但し、今年の上半期に関しては、これら配信ビジネスは飽和し、横ばいかやや軟調傾向にあるとしています。また、1年以上の外出自粛期間を経て、人々はコンサート会場に実際に足を運ぶことを望んでいます。これは、直近の公演や今夏に予定されているコンサートのチケットがすぐ売り切れになることが物語っています。公共施設の座席数制限が緩和される方針のため、今後公演数はますます増えていくでしょう。
ポストコロナの経済見通しと政府の景気対策
香港の小売業の業界団体によると、2021年の第1四半期は全体で12%の売上増となりました。これは2月初旬に飲食店の営業が再開したことと、「ステイケーション」に関する様々な国内旅行の施策が功を奏したことが貢献しています。政府は、景気刺激策として今年の下半期に630米ドル相当の電子マネークーポンを全ての香港市民に配布すると発表しました。また、新型コロナウイルスのワクチン接種を促進するために、様々な企業が抽選で特典を提供しており、これが香港経済を活性化させています。このように新型コロナウイルスにうまく対応できた結果として、今年の下半期の消費動向や景気は明るい見通しです。昨年は多くの店が営業できない状況に陥りましたが、一部のグループやチェーンは、都心部に新しい店舗の出店を模索していました。
中国
改正著作権法の下、強化される管理体制
新しい経営体制となった著作権管理団体のMCSCは、昨年施行された改正著作権法の下、多くの作家と音楽出版社と新規に契約を結ぶことで管理体制を強化しています。また、MCSCは様々な都市で行われている無許諾の公演に対し、著作権意識を向上するために民事訴訟を行っています。一方、CISAC(著作権協会国際連合)のアジア太平洋支部は、改正著作権法の下、配信や映像作品の許諾に関してMCSCや中国の音楽出版社との連携を模索しています。各出版社はこのような動きを歓迎しており、中国経済の復興により新たなスタートを切ることを期待しています。
ベトナム
暴走したファンに翻弄された音楽出版社
直近2か月の間、様々なアーティストのファンクラブから音楽出版社にクレームが届き、これらアーティストの音楽著作権をきちんと保護するよう要請されました。これらのクレームには、ベトナムでカバーされた海外やアジアの楽曲が多く含まれています。当初、出版社は即座に楽曲の使用を取りやめるよう主要なウェブサイトに通告を出していました。無許諾の楽曲がきちんと削除されることを確認したファンは、さらに多くのウェブサイトに対して削除要請をするよう、出版社に依頼をしてきました。ここで出版社は、こういったファンクラブの行動に疑問を抱きます。これらのファンが専門的な著作権の情報や出版社の担当者のデータを持ち合わせていたことに気づいたためです。結局、こういったファンは、楽曲を取り下げさせることで特定のグループや歌手の活動を妨害しようと画策していたことが分かりました。出版社はこのことを認識し、活動妨害のために利用されないよう注意喚起をすることとなりました。