2021年10月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
NFTにおける著作権使用料の問題
香港では数組の歌手が、NFT(非代替性トークン)にて、楽曲やミュージックビデオをリリースしました。その際、著作権使用料をどのように徴収すべきか、という問題が生じました。関係する音楽出版社は意見を交わし、28,000から35,000米ドルかかるNFTの初期費用を控除した後、残りの入札金額の7%を複製使用料とするよう、NFT企業側に提案をしました。しかし、いくつかの出版社は、海外にあるグループ会社から25%の料率にするよう求められました。レコード会社各社は25%という料率に難色を示しており、これほどの高い使用料を入札者に負担させれば、入札自体を控えることに繋がってしまうと考えました。一方で、一部のNFT企業は著作権使用料を10%以下に設定しており、最大で15%以上の料率にしている企業もあることがわかりました。
西九龍文化地区への期待
西九龍文化地区(九龍半島南西部の新たに埋め立てられた地域)は、2021年11月に最終的に完成することとなりました。西九龍は、複数の会場施設と様々なテーマの美術館や博物館、そして娯楽用の湾岸沿いの遊歩道で構成されています。既に広東様式のオペラハウスなどの一部の施設はオープンしています。既に主要なコンサートプロモーターは、2~3年という長期にわたって会場を押さえています。ライブを開催できることの強い確信があることが、このことから分かります。恐らく、この半年間の政府による厳格な感染症対策により、コンサートを無事開催できていたためでしょう。
ステイケーションの流行による旅行業界の回復
近場で休暇を過ごす「ステイケーション」の流行は、香港の旅行業界を後押しし、更なる好結果を生むことになりました。ホテルの業界団体によると、ホテルの平均稼働率が70%まで上昇し、繁忙期は90%にまで上昇したとのことです。様々なホテルが、ファミリー層向けの滞在プログラムなどの顧客を惹きつける施策を打ち出しています。国内旅行が、2021年全体の業績の損失を補填する形になっています。
中国
非独占契約の推奨と検索エンジンへの影響
以前政府から発表された非独占的な契約履行を推し進めるという通告は、何も新しいことではなく、既存の独占禁止法を改めて周知させるためのものだったと再度発表がありました。この通告は、検索エンジンなどのデジタル企業に少なからず影響を与えていました。いくつかの検索エンジンではこれまで表示されなかったコンテンツが、検索で表示されるようになったのです。
高額な著作権使用料に対する警告
この独占禁止法に関する懸念と併せて、数年前のオーディション番組や広告における高額な楽曲使用料についても、政府は言及しました。このことから、政府が同様の方法で新たな警告を発するのではないかと憶測が飛び交いました。主要な番組制作会社と広告代理店が、オーディション番組での楽曲使用で請求された約50万元(85,000米ドル)と、テレビCMで請求された200~300万元(33.5万~50万米ドル)を、高額すぎる使用料として不満を述べているためです。
テレビ番組制作に対する政府の介入
また政府は、市場の過熱につながるあらゆる流行について、忠告や警告を行う可能性があると言及しました。政府は最近、「上質な」番組制作を行うよう、地方の主要な番組制作会社に勧告をしたばかりでした。過剰にアイドルの宣伝をする番組や、プロダクト・プレイスメントや宣伝が多く含まれているような番組が多々見受けられるとの報道があったためです。
タイ
国内でオンラインフォーラムが開催、出版社の役割とは
MCT(Music Copyright)とPhonorights, 及びMCTとPhonorightsが共同でライセンスを行うMPC(MPC Music)の3つの著作権管理団体は、各会員に向け、音楽出版ビジネスをより深く学ぶためのオンラインフォーラムを開催しました。MPA香港は、出版社の役割について講演をするため、本フォーラムに招待されました。タイでは、作詞・作曲家から曲を買い取り、楽曲を制作していくレコード会社に比べ、音楽出版社はこれまで十分な存在感があるというわけではありませんでした。管理団体の設立は、利用者から著作権使用料を徴収し、関係各社に適切な使用料が届くようにする、持続可能なエコシステムのメリットを証明するものです。本フォーラムでは、会員から「なぜ出版社が必要なのか」「国外ではどのように楽曲が管理されるのか」といった質問がありました。作家の意向により楽曲がいかに保護され、いかに宣伝されるかといったことや、その地域の慣習や文化を熟知し、その地域の言語を理解している現地のパートナー企業を持つことの利点などについて、MPA香港としての見解を共有しました。