ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)2022年4月30日付

2022年4月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

返還25周年を経て香港ポップスがさらに広まりをみせる

 香港が中国に返還されて25周年を迎えるにあたり、大手テレビ局TVBはMango TV(中国の大手テレビ局Hu Nan TVグループの子会社)とタレントショー「Endless Melody」を共同制作した。この番組は、70年代から00年代にかけてのカントポップ(香港ポップス、広東語ポップス)の黄金ヒット曲へのオマージュである。香港と中国本土から選ばれた約20の新人やベテランの歌手やグループが出演した。このショーのプロモーションは、さまざまなメディアで行われた。中国各地の大型ショッピングモールに設置されたビデオウォールや大型ディスプレイには、番組で歌われる楽曲の歌詞が表示された。広東語の歌詞は自然な形で中国本土の人々に、カントポップと香港の文化の特徴に関心を向けさせた。80年代に中国が音楽の文化開放したときに、香港のカントポップは中国本土で重要な役割を果たした。
 
 今回の公演はコロナウィルスの第5波が去り、劇場や店舗が再開されたタイミングでの開催となった。また、Viu TV(香港電視娯楽)を代表するポップスターKeung To(姜濤 ギョン・トウ)は4月30日に誕生日を迎えた。彼の誕生日を祝うために、メディアによる大規模なプロモーションが行われた。Keung Toのファンクラブは、彼の誕生日に全ての人を対象としたトラムの一日フリーライドを提供した。トラムに乗ったファンたちは、島の海岸沿いのトラム路線をカーニバルにした。
 
 地元で生まれたアイドルを求める声は、市場でも強くなっている。Viu TVの母体であるPCCW(大手通信企業)は、ローカルタレントを求める市場の動向に対応するため、Makerville(スター誕生)という新たな事業への投資を発表した。Makervilleは様々なタレント番組やドラマシリーズの制作に力を入れ、Viu TVはテレビ番組の放送やネットワークの拡大を担当している。また、Makervilleは、カリスマ的なアイドルKeung Toや、2つのボーイズグループMirrorとErrorを成功させるために、アーティストのマネジメントと人材育成を担当する。4月27日に行われた記者会見では、Mirrorのオフィシャルファンクラブの設立が発表された。

中国

クリエイティブ産業の育成のため、政府が著作権運用を強化

 政府はデジタル音楽市場の独占禁止法に関する懸念事項を公表した後、特にデジタル領域におけるクリエイティブ産業の育成のために、著作権保護に対する著作権法の運用をさらに重視し、国民の意識を高めさせている。音楽産業だけでなく、IT、ソフトウェア、写真、文学など、今後のクリエイティブ産業発展のためのエコシステムに不可欠な他の分野についても重視している。

フィリピン

FILSCAPがプラットフォーム事業者に警告書を送付

 FILSCAPは、地域の出版社の支持を得て、ついに国際的な大手OTT(オーバー・ザ・トップ・メディアサービス)プラットフォームに対し、長年未解決だったライセンス供与を復活させるよう警告書を送付した。前号で述べたように、OTTプラットフォーム事業者がライセンス料を6割も大幅に引き下げたため交渉が決裂した。FILSCAPと出版社は、この交渉が誠実なものではないとの認識を示し、さらに、断片的なライセンシングではなく他の権利管理団体とともにワンストップライセンシングを提案した。

ベトナム

著作権法改正による権利規定の影響を精査

 このたびの著作権法改正において、著作権者の許諾を得た録音・録画物について、利用者が複製・送信する際に、著作権者の許諾は不要であるが使用料の支払いが必要となる一時的な権利が規定されることが明らかになった。地域の出版社はこの条項について懸念を示している。CISAC APオフィスは、当該内容について技術的な問題があり得るので、それをより明確化するためにVCPMC(ベトナム音楽著作権保護センター)に照会していることを、出版社に伝えた。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年Fujipacific Music (S.E.Asia) Ltd.マネージングディレクター。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。