2022年8月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
今夏のコンサート開催状況とステージ演出規制
7月下旬から新型コロナウィルスの患者が急増しているが、一般の人は慣れる傾向にある。予定されていたライブやイベントも、夏場はそれほど影響を受けていない。しかし、有名なボーイズグループMirrorのコンサート会場で、重大な事故が発生した。巨大なLEDモニターが落下し、ダンサー2人が負傷した。そのうちの1人はいまだに危篤状態である。この事故は政府の関心を呼び、独創的なステージデザインについて規制した。Mirrorのコンサートの事故に関する最終的な詳細報告がなされるまでは、動くステージや吊り下げられたステージの演出は一切禁止されている。
経済商務部知的財産局と著作権業界団体がディスカッションを行う予定
著作権法改正案(通信権の導入について)について前号のニュースレターで述べたように、経済商務部知的財産局は9月下旬に著作権業界団体とテーブルディスカッションを行う予定だ。この討議では、セーフハーバー規定に基づく行動規範に焦点が当てられる予定だ。出版側では、MPA HK、CASH、CISAC AP事務所が招かれた。MPA HKとCISAC AP事務所はセーフハーバーについて一度議論し、重要なポイントはTakeDownとStayDownの問題であるとしている。現在の規定ではTakeDownの要件のみが言及されているが、MPA HKはStayDownがカバーされることを考慮している。
コンサートのライブストリーミング権利料率の誤謬
いくつかのコンサート主催者は、アーカイブを含まない純粋なコンサートのライブストリーミングのデジタルストリーミングレートについて懸念を示した。これらのオーガナイザーは物理的なコンサート収入に対する公開演奏ライセンスレートは2.5%であると述べたが、ストリーミング演奏のレートは15%であると知らされ、さらにいくつかの出版社はシンクロ料に加え、20%のメカニカル料を請求してきたという。そうなるとコンサート収入の50%近くになり、主催者はライブストリーミング市場を継続するのは無理だと判断した。
中国
テレビ局がシンクロ使用料の引き下げを出版社に要請
大手のテレビ制作会社胡南テレビは、バラエティ番組やタレント番組で楽曲を使用する際に請求されるシンクロ使用料の引き下げを出版社に要請した。過去6年間、業界の使用料は10倍の6万~8万元(8,600~11,000ドル)に引き上げられたが、一部の出版社は1曲あたり20万~30万元(28,000~43,000ドル)を請求しているという。共同出版された楽曲がある場合、かなりの数の楽曲が以前の高い使用料に合わせる必要がある。テレビ局は、過去2年間、国内経済が新型コロナウィルス禍によって大きな打撃を受けているため、料金の引き下げを希望している。
フィリピン
権利処理ワンストップサービス
フィリピンではFILSCAPと香港のCASHが、地域の出版社とともに合同ライセンス・チームを結成し、世界のデジタル・プレーヤーがフィリピンのライセンス対象レパートリーの大半を簡単にワンストップで入手できるようにした。このフィリピンのライセンスモデルは非常に効果的に機能しているので、他の東南アジア地域のモデルとして拡張していく予定だ。他のライセンス供与者が出現しワンストップサービスを阻害する可能性があるというハードルもあったが、フィリピン政府は外国企業がフィリピンで一括ライセンスを取得する場合は、現地のCMOのライセンス認定を受ける必要があると再三述べている。
タイ
音楽出版社の設立が続く
タイではデジタル化の進展に伴い、母体となる制作会社から設立されたローカルパブリッシャーが増加している。MCTは音楽出版社の会員申請が多くなっていることに対応している。地域の出版社からは、出版ビジネスを発展させるために出版社同士の非公式な話し合いの場を設けることに協力したいとしている。MCTは、タレントショーの増加に伴い地元のTVプロダクションがTVシンクロライセンスを包括的に求める傾向があると述べている。地域の出版社は、香港のTVブランケット・ライセンス契約モデルが出版社とTVプロダクションの双方にどのような利益をもたらしているかについて説明した。