2022年12月30日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
著作権法改正案が可決・公布と二次創作の問題
前号で紹介したように、2022年12月7日に著作権法改正案(2012年案を元にした)が可決・公布された。著作権業界側としては、今回の改正でパロディの例外範囲が拡大され、セーフハーバーの行動規範(コード・オブ・プラクティス)が不明確となり、フリーユースに抜け道ができる可能性がある。また、一部の議論では、パロディ化された歌詞について元の著作権者がその部分的な著作権を維持できるかどうかが問題として残っている。知的財産局は、音楽出版社が新たに翻案された歌詞の著作権シェア(部分的な著作権)について元の著作権者の同意が必要であるとしている事を聞いているが、著作権シェアの配分方法については中立的な立場を維持している。
多数の現地ソングライターを抱えているある大手多国籍レーベルの音楽出版部門は、すでに定番曲やポップス曲から新しい歌詞を書くライターに強制的な著作権シェアを要求している。一部の出版社はすでに部分的な歌詞の改作を認めず、曲の改作は事前に許可を得て原曲の作詞者の権利を尊重すべきであると表明している。
コロナウイルス対策のための制限がさらに緩和されたことで、会場に聞きに行くフィジカルなコンサートは高いチケットセールスを記録している。年末年始に行われる様々な著名な歌手のコンサートは、数分で完売することもある。来年に向けて海外アーティストのコンサートもますます増えていく見込みである。また、観客はフィジカルなコンサートの雰囲気を好むが、バーチャルコンサートは地元の観客には合わないようだとも言われている。現地の主催者の中には、時差の関係でオンライン・ライブ配信を海外の観客に遅らせて配信しているところがある。
中国
「未来のための著作権創造」会議が開催
マカオで開催された「未来のための著作権創造 Copyright Creativeness for the Future」会議に、MCSCの代表者が参加した。マカオは、グレーターベイエリア(南西のマカオ、北の広東、南東の深センと香港からなる珠江デルタ)の南西の主要拠点であり、地域の多様な音楽市場の振興と広東省の音楽ビジネスの発展をサポートする重要な役割を担っている。この会議は、地域のクリエイティブな音楽シーンを促進し、広東省の近隣都市からより多くの才能を集め、新興クリエイティブビジネスのためのライセンス環境を確立することを目的としている。
台湾
OTTプラットフォームとのライセンス交渉
業界と出版社が2つの主要な国際的なOTT(セットトップボックス)プラットフォームとライセンス契約を結ぶには、かなりの時間を要した。大きな争点は2.5%というライセンス料率で、プラットフォーム側は他の東南アジア諸国で採用されている比較的低い料率(約1.5%)を主張した。この問題は他の東南アジア諸国との交渉も停滞させた。それでも業界と出版社は多くの地域で採用されている一般的なレートである2.5%の料率を堅持している。
タイ
観光客増加にともなう実演の活況
タイへの旅行者の増加にともなって、小売業および観光業は前四半期に大幅な成長を遂げた。さらに、コンサートやライブの活況も徐々に回復している。業界は、新年に向けて演奏収入は堅調に推移し、デジタル音楽は安定的に成長すると見込んでいる。