2023年2月28日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
オンラインライブ事業者が包括的なライセンシングを引き続き要望
公共施設での新型コロナウィルス対策規制が解除され、小売市場も徐々に回復してきている。本日、ついに政府は、新型コロナウィルスや季節性インフルエンザの患者数が極めて少ないとして、3月1日からすべての施設でのマスク装着義務を解除することを発表した。今後多くの観光客が戻ってくることが予想されている。一般小売業、レストラン、ホテル業は好調に推移していると見られる。また、秋に向けて様々なライブや文化イベントが各会場を埋め尽くす。CASH(香港作詞作曲家協会)も11月上旬にガラディナーを3年ぶりに開催することを発表した。経済成長の恩恵を受けて公演収入が増加することが期待されている。ケーブルテレビ香港は、有料放送免許の返上について政府から認可を受け、今年6月に発効すると発表した。このライセンスは2025年に失効することになっていたが、ケーブルテレビ香港はそれ以前に放送サービスを終了することにした。同局は1993年に設立され、24時間放送のニュースチャンネル、旅行チャンネル、多数の外国語チャンネルを提供している。その中でも、サッカーチャンネルは多くの有力な試合の放映ライセンスを獲得し、何年もの間ファンに人気となっていた。しかしながら、急速に変化するデジタルメディアは有料放送事業者を苦境に追い込んでいた。ケーブルテレビ香港は、無料放送チャンネルHoy TV(グループ傘下のOpen TVだったもの)へ投資を切り替えることを表明した。Hoy TVはこの2年間、音楽、ドラマ、旅行番組などを多く制作してきた。前号で述べたように、さまざまなライブコンサート事業者がオンラインライブに関わるシンクロと公衆送信に関する包括的なライセンス契約を締結しようと、現地の出版社や著作権団体に働きかけている。また、ある多国籍出版社は、関連するオンラインのシンクロの権利を海外で処理すると表明した。このような断片的なライセンス契約の継続は、シンクロやメカニカルライツ・公衆送信権処理が不可避であるオンラインライブコンサート事業者だけでなく、他の多くのメディアやプラットフォームを不満にさせている。
中国
楽曲と歌詞を分離した翻案作品にまつわる訴訟判決とその影響
2021年に起きた「五环之歌」(五つの環の歌)の訴訟では、既存の著作物に新たに歌詞をつけた場合、新しい著作物の50%の著作権を得られるという判例が作られた。この訴訟では、著作権法が音楽著作物(音楽旋律)と文字著作物(歌詞はこの範疇に入る)の著作権を区別して規定していることから、新しい作詞者の歌詞の著作権が認められるとする裁判で決着がついた。この訴訟は今後の翻案作品のライセンスをどうするかという点で多くの議論を呼んだ。現地のプロダクションの中には、既存の楽曲の音楽(旋律)部分を保有する出版社にライセンスを求めようとするところもあった。しかし、出版社は、作曲家と作詞家が別人であっても音楽と歌詞のある楽曲の創作を結びついた著作物として扱うという従来の業界慣行に従うことを望んでおり、そのような権利を認めない傾向にある。言うまでもなく、楽曲が知られることは、楽曲部分や歌詞部分だけに起因するものではありえず、音楽と歌詞の両方が曲の創作において相互に重要である。
台湾
MUSTがデジタル権を伴わない楽曲登録を受け付けないことを改めて表明
MUST(中華音楽著作権仲介協会)は、市場において特定の権利を利用者にライセンスすることが不可能であることを理由に、デジタル権を伴わない楽曲登録を受け付けない場合があることを改めて表明した。例えば、テレビ局は放送サービスだけでなくデジタル領域で様々なサービスを提供している。また、特定の権利の登録はシステムを複雑にし、権利処理の流れを停滞させている。さらに、現地の知的財産局は、外国の包括ライセンスや一括ライセンスは、この地域では認められていないと表明している。
インドネシア&フィリピン
新しい著作権処理システムが最終テスト段階へ
WAMI(インドネシア)とFILSCAP(フィリピン)の2つの団体が立ち上げる予定の新システムAtlasは、出版社が大量の楽曲と契約を登録するためのテストを行う最終段階に入っている。すべての関係者は、新システムが高度なデジタル市場に対応するため、楽曲登録と使用料処理においてより効率的なものになると期待している。新システムの開発にあたり、出版社と2つの団体は協力関係を強化してきた。