2015年8月18日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
広東ポップの影響力
香港貿易開発審議会は香港の最大の見本市であるサマーブックフェアにおいて、半世紀にわたる広東楽曲のリリック(歌詞)フェアを開催することを発表しました。MPA香港はCASHと協力して広東音楽の象徴となる作家達を集めたイベントを行い、作詞についてのセミナーを開催しました。2012年から2014年まで行われていた「オキュパイ・セントラル」デモでは、多くの広東ポップを使ったパロディーが作られました。これによって多くの人々が広東音楽の最盛期について気づかされることとなりました。広東ポップはかつて80年代から90年代において、香港だけでなく、中国南部地方(広東語はこの地方の第2言語)や、マレーシア、シンガポール、タイといった国々においても中国語を話す広東人コミュニティーにとても大きな影響力がありました。
さらにこのイベントでは、愛、挨拶、時には政治的な風刺を込めたフレーズがつけられた様々な商品が販売されました。中でもソフトドリンクのパッケージには歌詞の一部がそのままプリントされて販売されており、消費者には彼らの気持ちを表現できるパッケージとして非常に人気を集めました。しかしその一方で、多くの出版社が広東語の歌詞に込められた意味についてだけでなく、作詞の使用料についての適用ルールやライセンスに関しての質問を受けていました。
模倣品、コピー製品への取り組み
香港税関当局はソーシャルフォーラムの場で模倣品やコピー製品が売られているという重大な問題について記者会見を行いました。実際にはほとんどの人々は自分達の販売しているものが模倣品に該当するという認識は持っていないため、法的責任を追及されることはおかしいと感じていました。これは明らかに著作権を無視するという誤った認識です。これら一連のパロディー作品により、多くの人々が一部の著作権利用だけであれば法的責任を問われないという誤解を招いた事実について、著作権者や知的財産部としては非常に大きな問題と考えています。
中国
放送ライセンスと正しい印税分配システムの確立
6月下旬までに35のTV局と43のラジオ放送局がMCSC(中国著作権管理団体)から放送権を取得しました。これにより主要局だけでなく、全ての地方局も含めた中国全土がカバーされたことになります。一方MSCSは未だに放送権を取得しない一部の団体に対して様々な法的措置を取り続けています。法的費用によるダメージ(例:US400~US1,200)はさほどインパクトはないにしろ、このことは放送局や視聴者に対して著作権の重要性を伝える良いきっかけとなっており、多くのテレビ局やラジオ局が使用料の支払いに応じています。このことから出版社は各団体とさらに深い議論を行い、より洗練された正確な印税分配システムが配備されるべきだと考えています。
台湾
Appleから見るデジタル配信サービスの現状
Appleの定額配信サービスが香港の団体であるCASH、東南アジア各国の出版社間では交渉の最終段階までたどり着いた一方で、台湾の出版社はAppleが他の東南アジア諸国と同じタイミングでサービスをスタート出来ない可能性があるという大きな障害を抱えています。台湾の出版社は海外メジャー定額配信サービスを国内市場に参入させることによる様々な影響について熟考している状況です。また、台湾におけるもう一つの重大な相違点は現地のデジタル配信サービスが各権利者と個別の印税交渉をすることが出来ることにあります。実際にはこのことが国内における徴収団体の役割を弱体化すると同時に、使用者にとっても各権利者との関わりをより難しくしてしまっています。さらに現地出版社の中には録音権について団体を通すことを義務化して欲しくないという問題もあります。過去に iTunesのライセンスについて、出版社は団体ではなく現地MPAへ録音権を取り扱って欲しいと求めた経緯もあります。