ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2017年6月30日付

2017年6月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

Fantastic TVの放送開始

 香港で三番目の無料衛星放送テレビ局となるFantastic TVが5月初旬に運営を開始しました。Fantastic TVは香港ケーブルTVの子会社で、自社制作のものを含め、多数のケーブルテレビ番組を提供しています。開始まもない現在のところ、ローカル制作の番組はそれほど放送されていないようです。この運営開始に先がけて、親会社の香港ケーブルTVは、メイン出資者だったWharf Holdingsが出資停止を申し出るという経営危機に瀕していました。5月下旬、Forever Top Asiaが新たな出資者として名乗りを上げ、この危機は回避されました。Forever Top AsiaはかつてATVを成功に導いた(のちに売却)、邱(Chiu)一族の経営です。

ATVの経営破たん

 かつて香港第二のテレビ局であったATVは、2016年4月に放送停止となりました。停止後は裁判所のもとで債務整理の手続きに入っていました。最近、新たな出資者が現れ、同社の大型債務の解決や、債権者との和解のためさまざまな調停を行っています。債務整理手続きは、7月中旬に裁判所による最終的な判断が下される予定で、債権者はそれまでに和解案に歩み寄る必要があります。

TVBの新しい戦略

 一方、最大手テレビ局のTVBは、KOL(Key Opinion Leaders)アプリを導入してデジタル化の波へ対応し、従来型のテレビプラットフォームに若い視聴者を取り込もうとしています。さらに新たな会員制サービス“myTV Super”を打ち出し、あまりテレビを見ない層も取り入れようとしています。また、TVBで放送中の職場での人間模様を描いたドラマが非常に好評で、現在の人々のデジタルフォーラムでの行動といった要素がよく捉えられています。この人気ドラマは最高視聴率記録を更新しました。

台湾

TIPOの分配調査について

 台湾の知的財産権を扱う官庁(TIPO)は、音楽と歌詞が別々に使用される際のライセンスおよびロイヤルティの分配についての調査を行いました。出版社あるいは管理団体に対し、ミュージカルの音楽のみが使用される場合は曲部分のみのライセンスを認めるかどうか(または歌詞のみの場合は歌詞のみのライセンス)に関する調査です。
 そこでMUSTはMPA HKに対し、歌曲が音楽のみや歌詞のみなど、ある特定の方法でしか使用されない時、出版社はどのようにライセンスを行うかという点を問い合わせました。MPA HKはその回答の中で、音楽と歌詞がそろった状態で発売された楽曲については共同著作と考えられるとしました。歌曲が一般に認知されるにあたっては、音楽と歌詞のどちらの役割も欠かせません。よって音楽または歌詞どちらかのみの使用であっても、音楽と歌詞の両方についてライセンスの取得が必要だとしています。
 MPA HKによると、パロディ作品についてのIPD(香港知的財産局)との話し合いにおいても、こうした業界内で広く行われているライセンスの慣習について説明しました。IPDは、業界内での慣習とライセンスシステムを支えるバッググラウンドは、強力な法的根拠になり得るとしています。香港の著作権法では、音楽作品と文芸作品(歌詞含む)は独立した著作権として定義されています。

タイ

MCT総会と今後の動き

 6月下旬、タイ音楽著作権協会(MCT)は役員選挙のために年次総会を開きました。最終的に、3つの出版社から、国際的な大手出版社1社と、国内の出版社1社が役員に選出されました。またMCTは、アジア音楽出版社協議会(AMPS)を顧問として迎えました。MCTは年次総会の出席者に対し、役員再任に賛成が得られなかった昨年の年次総会によって壊れかけた信頼関係の回復を目指し、昨年一年間にわたってMCTの構造改革を行ったこと、著作権協会国際連合アジア太平洋委員会(CISAC AP)とAMPSがそれに大きく貢献したことを報告しました。
 AMPSは国内の出版ビジネスを脅そうとしているのではなく、MCTにより洗練された正確な著作権システムを導入してもらいたいと考えている、との従来からの主張を繰り返しました。AMPSはCISAC APとも会合し、AMPSとMCTの協力活動は、今後東南アジアにおいて同様の協力を行うにあたって良い例になったと強調しました。
 AMPSは翌日のCISAC AP主催の研修会にも参加しました。AMPSは、出版社との信頼関係を築き、協会に協力してもらうには、適切なデータ管理が重要であるとの意見を示しました。

シンガポール

法務・知的財産省の意見公募資料

 5月初旬、法務・知的財産省はウェイブサイト上で、権利の集中管理についての意見公募資料を公開しました。対象となるのは主に、著作権者と権利者、音楽の使用者、そしてその他の管理団体という3つ分野の人々です。
 シンガポール現地の出版社は、この問題についての意見を多数提出しました。意見公募資料では、システム全体やデータ管理の問題から、管理団体の役員会構造やガバナンスの問題までが扱われています。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。