2017年8月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
広東ポップスを特集したイベント開催
CASH(香港著作権管理協会)とMPA HKはこの夏、“Listen to Canto-Pop”と題したイベントを共同で開催し、ローカル広東ポップスのプロモーションを行っています。8月中旬から9月初めにかけて、香港最大級のショッピングモール、タイムズスクエア正面のオープンエリアでの開催です。IFPI(国際レコード連盟)と公共テレビ・ラジオ放送局RTHKも協力団体として、過去3世代にわたる広東ポップスの音源や映像を提供しています。イベントには4つのコーナーがあります。1つめはラジオ・テレビの時代、2つめはCD・レコード・カセットテープ、3つめはデジタル、そして4つめはCASHとMPA HKのコーナーで、CASHの40周年を記念するとともに、広東語の優れた歌詞を紹介するものとなっています。2名の現代書道家を招き、広東ポップスのヒット30曲の中から抜粋した歌詞を書道作品として見せています。
このイベントは驚くべき集客力を発揮しており、メディアでも大きく取り上げられています。これまで広東ポップスがいかにローカルカルチャーを盛り上げ、それが香港をローカルのみならず、中国大陸のエンターテイメント業界にとっても重要な地位に押し上げていったのかを、このイベントを通して一般に改めて認知してもらいたいと関係団体は考えています。
台湾
MUSTがCASH,AMPSと録音権ライセンス問題等を協議
MUST(中華音楽著作権仲介協会)のゼネラルマネジャー兼新チェアマンが香港を訪問し、CASHおよびAMPS(アジア音楽出版社協議会)と会合を開いてライセンス問題とそれにともなうCASHの開発したDIVAシステムの使用について協議しました。
主に問題となったのは録音権のライセンスとロイヤルティ手続きについてで、出版社側は、台湾では作曲家の多くが出版社と著作権の永続的な譲渡契約を結んでいないため、MUSTが政府の承認を経て録音権管理を始めた場合、作曲家との直接契約が可能になることを憂慮しています。すなわち将来的には、作曲家がロイヤルティをより早く受け取るためにMUSTを選ぶのではないかということです。
そこでAMPSは双方の隔たりを埋めるために、代理契約を結ぶことを提案しました。MUSTは台湾の音楽出版社協会および出版社に代わって手続きを行うエージェントとして活動できる一方、台湾の音楽出版社協会および出版社はこれまでどおり録音権を管理することができます。
中国
NCAC、MCSC等がデジタル音楽市場の懸念を協議
8月初旬、NCAC(国家著作権局)が中国の出版社、MCSC(中国音楽著作権協会)およびCISAC AP(著作権協会国際連合アジア太平洋委員会)事務局との会合を開き、大手デジタル配信業者2社が持つ独占的代理契約について懸念が広がっている件を協議しました。中国では、以前のように自由に曲が聴けなくなったという国内のオーディエンスからの苦情が大きく報道されています。ニューアルバムを聴こうとすると複数のストリーミングサービスに登録しなければならず、余計な利用料がかかってしまうということです。こうした一部のみの断片化したライセンスは、デジタルミュージックシーンに大きな混乱をもたらしています。
会合でNCACは、こうした状況が続けばデジタル市場にとって有害であるとし、出版社に真剣な対応を求めました。出版社側は、すべての出版社がそうした独占的代理契約を結んでいるわけではないと回答しました。また契約を結んだ出版社も、姉妹レーベルがそのような独占的契約を結んだため、同じ契約をせざるを得なかったとしました。
会合では、こうした独占的代理契約が生まれた原因についても、しっかりとした包括的なロイヤルティシステムが存在しないためだとする出版社側の意見が出されました。NCACはその点に同意した上で、MCSCと出版社が将来的なライセンス問題について、お互いの善意による議論で解決することを求めました。
さらにCISAC AP事務局と出版社の間では、もし断片化したライセンスがこのまま続けば、政府が乗り出して新たな集中管理団体を作る口実になり、10年前にカラオケの集中管理団体CAVCAが発足した時と同じことが起こるだろう、という議論が交わされました。
フィリピン
出版社とFILSCAPがロイヤルティ等に関する協議を実施
8月中旬、出版社各社がFILSCAP(フィリピン音楽著作権協会)を訪問しました。著作権登録とロイヤルティに関する出版社側の懸念について協議するためです。FILSCAPは出版社側に対し、MIS@AsiaシステムのIT企業との直接的な交渉を行っている旨を伝達しました。出版社側はこれを異例のことととらえ、本来は母体でありシステムを担当しているCOMPASS(シンガポール音楽著作権協会)の管轄ではないかとしましたが、FILSCAPにチャンスを与えることで合意し、CWRテストファイルを送りました。
また出版社側は、COMPASSとの間で長期にわたる未解決の問題があるため、他の協会のデータを使って出版社側が登録したデータを上書きしないよう求めました。テレビ、ラジオのロイヤルティについては、出版社側はFILSCAPに対し、他のアジア圏の著作権協会を参考にするための資料収集を提案しました。