ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2017年12月31日付

2017年12月31日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

香港のテレビメディアに起こった変化

 2017年、香港のテレビメディアにはさまざまな変化が見られました。Viu TVとFantasy TVの2局が、新しく市場に参入しました。大手のTVBは、より一層ネットの要素を取り入れ、人気歌手やネット上のフォーラムでの有名人たちと契約することで、自社のマルチメディアTVプラットフォームと共に台頭しました。
 一方で、2016年4月時点で経営が悪化していることが判明し、倒産したATVは中国本土の投資家により救済されました。その投資家はATVと共に育ち、彼にとって最も困難な時期であった80年代、ATVのファンだったと語っています。2017年の中頃、全ての債権者が債務整理に合意し、ATVに財務リストラクチャリングが行われました。12月初旬、大部分の債権者が清算契約に合意しました。その後12月18日に、かつてTVBの経営を行ったチームがATVの新しい経営陣となり、自社の新しいOTTデジタルプラットフォームについて発表を行いました。ATVはまた自社の新計画や、その第一歩として有名テレビドラマや自社の有名番組「百萬富翁」のリメイクを行うと発表しました。

CASHとMPA香港がデジタルライセンスに関する新たなワーキングループ会議を開催

 11月初旬、デジタル市場における細分化されたグローバル/地域ライセンスとローカルライセンスの対立が原因でMPA香港に対し大量の反訴が行われていることに対処するため、CASH(香港音楽著作権協会)とMPA香港は新たにワーキンググループ会議を開催しました。いくつかのローカルな多国籍出版社が他の協会とのグローバル/地域デジタルライセンス協定が原因でデジタル著作権料を徴収しないよう指導を受けており、このためCASHは国際的なデジタル企業に対する実際のクレームを記録するために余計な時間と人件費を費やしています。更に、さまざまなローカル出版社とCASHの間で大量の書類が行き来するのを管理するための作業が発生しています。両サイドの多大な仕事量を最小限に抑えるために、CASHは出版社に対し一括合意登録を活用することを提案しており、一方でCASHはいくつかの優先度が競合している登録の整理を実行しています。また、CASHは新しく導入された、ほとんどの国際的な協会で採用されているAVRフォーマットのキューシートの使用に繰り返し言及しており、出版社が海外の事務所にAVRフォーマットのキューシートの提供が可能か問合せることを望んでいます。

香港の一般小売市場は緩やかに成長

 2017年の決算では、一般の小売市場はまたも緩やかな成長を遂げていました。10月にホテルの占有率がほぼ100%の高い値になったことも、小売市場の強い勢いを反映してのことです。2018年にはいくつものショッピングモールやホテルが完成し、一般の業績利益も順調に伸びていくことが予想されます。

中国

MCSCがデジタルライセンス料率の引上げを発表

 独占的なデジタルライセンス供与の問題は、一旦やや落ち着きを見せましたが、解決はされていません。一方で、MCSC(中国音楽著作権協会)はデジタルライセンス料率を新たに14%に引上げると発表しました。出版社の側では、いくつかの出版社はMCSCとのデジタルライセンス供与の折衷分割の議論を継続する余地があると考えていますが、その他の企業は大手デジタル企業2社に独自にライセンスを供与しており、デジタル著作権を分割しないままにする状態を維持しています。
 デジタルライセンス供与は国際市場に沿ったやり方になるべきか、それとも中国市場に向けた、他に類を見ない単一のデジタル権利として維持していくかという問題については、中国著作権法下の3つの基本的権利、すなわち、録音権、演奏権、そして翻案権について再度取上げられた、中国著作権局からの強い声明にも関わらず、状況はより複雑かつ政治的になってきています。政府がデジタル市場の混沌とした状況を望んでいないことは明白です。

タイ

MCTが再編成、AMPSと共同で活発に活動を開始

 一年のリストラクチャリングを経てMCT(タイ音楽著作権協会)は、さまざまな出版社の人間や作家たちが役員として理事会に参加するようになりました。アドバイザーとして、この地域の出版社の協会であるAMPS(アジア音楽出版社協議会)もまた、理事会の会議に参加しています。会議では、AMPSはMCTと他の協会がどのように機能しているかについて情報共有を行いました。例えば、小委員会のワーキンググループの組織、ライセンスチームと文書チームが出版社と一層の議論を行うことによる、より効率的かつ効果的なワーキングプラットフォームの構築などについてです。協会は、内部で出版社と事務所のスタッフによるワークショップをより多く開くことを計画しています。外部に対しては、協会は自分たちの存在と機能について紹介することで、著作権に対する関心を高めることを目的としたワークショップを開こうとしています。高まった団結力を背景に、MCTは合同ライセンス団体であるMPC (MCTとレコーディング協会であるPhonorightsで構成されている) とのワーキングパートナーシップの強化も計画しています。主要な目標は、主だった商業ショッピングモールでのライセンス収入の増加と、地方TV局との放送ライセンスに関する合意です。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。