ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2018年4月30日付

2018年4月30日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

香港でもチケットの高額転売が問題に

 近年、多くの外国人が、国内・国外のコンサートチケットの高値での転売行為を行っている。2018年最初の3か月で状況は悪化しており、政府もこれに注意を向けるに至った。さまざまなメディアが広く伝えるところによると、多くの音楽ファンが元値の10倍にものぼる高値でチケットを買わされたと苦情を寄せている。チケット販売開始の数日前から販売所の外に外国人ばかりが行列を作る光景があちこちで見られる。オンライン販売においてもチケットが入手しにくい状態は相変わらずである。コンサート入場時に有効なID付チケットの販売システム立法化の検討を求め、多くの団体が政府に陳情を行っている。これは、チケット購入者と同じIDを持つ者のみをコンサートに入場させるというシステムである。ただし、コンサート運営者らは、1,000席を超える規模のコンサートでは認証手続きに2時間以上かかることが予想され、実施には困難が伴うだろうと主張している。

地域経済の活性化で使用料収入の大幅な伸びを予測

 小売業は安定的な成長を見せ、一方、新しいホテルが次々にオープンし、旅行客増加に伴って伸びる宿泊需要に対応している。今年の夏・秋に向けて香港、マカオ、珠海市(広東省南部の重要なハブ都市)を結ぶ長い橋が開通し、地元テーマパーク「オーシャン・パーク」が拡大するのに伴い、旅行客の数は大きく伸び、同地域の経済全般も大いに活性化されると思われる。今後数年間、演奏使用料の収入は力強い伸びを見せることが予測される。

中国

放送使用料、演奏使用料の支払い求め多くの訴訟

 政府が放送使用料の料率を制定してからほぼ10年が経つが、地方テレビ局の多くは未だに協会との使用料設定を拒否しており、多くの訴訟が起こされ、現在も継続中である。これに加え、コンサート開催に伴う演奏使用料についても同様の問題が起こっており、訴訟に持込まれたケースも多い。多くの判決で示される損害額は数千中国ドル(約500~800米ドル)とあまりに低く、これでは違反者へのダメージにはならず、今後も同様の違反行為が繰り返される恐れがあると懸念している。

タイ

MPC経営陣刷新で内陸地域での活動拡大めざす

 MCT(タイ音楽著作権協会)とIFPI(国際レコード製作者連盟)タイ事務局により設立された共同ライセンシング団体MPCの経営陣が刷新された。MCTもIFPIタイ事務局もこれによりMPCに何らかの変化がもたらされるであろうと考えている。MPCは、パタヤ、プーケットといった主要観光地のメンバーライセンシング機関と足並みを揃えつつ、内陸地域にも活動を拡大していくことをめざしている。

フィリピン

デジタル市場の収益増のため政府が国内での権利処理に関心

 東南アジア近隣諸国の影響もあり、フィリピン政府知的財産局は、国内地域経済圏における権利の許諾業務は国外ライセンサーを通じてではなく、国内で処理されるべきであるとの姿勢を示すと見られる。政府はデジタル・マーケットにおける収益増加に関心を寄せており、国内の団体が許諾業務をコントロールするようになることを望んでいる。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。