2018年6月30日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
地元のサブスクリプションが生き残りに苦戦
音楽のサブスクリプションに関しては、過去数年間にわたって海外と地元の事業者が競合し続けています。地元事業者の生き残りは厳しく、残った事業者はMoovのほか数社のようですが、Moovは地元アーティストの宣伝のためにいまもライブ・コンサートを企画しています。
それでもなお、Moovは、断片化されたさまざまなライセンスグループへの権利処理に手間がかかっているうえ、それらのグループから、海外の事業者が課されている料率よりも高い料率を支払うよう迫られています。地元出版社の数社はそのような高い料率は要求していないものの、Moovは、このような料率による請求方式に運営陣は苦しんでいると言っています。
再開したATVの運営、波に乗れず
2018年1月にATVがデジタル市場で生まれ変わり、半年が経過しました。残念なことにATVは6月上旬に職員の30%を解雇することで運営コストを削減せねばなりませんでした。上半期、ATVは元TVBの有名俳優や女優を雇い「百萬富翁(ミリオネア)」や「See You Tonight」などの番組に出演させたものの、ATVの象徴的な番組は以前ほど良い視聴率は得られませんでした。
香港知財局が地元著作権業界団体等をAPECワークショップに招待
2018年6月中旬、香港の知的財産局(IPD)が、地元の著作権業界団体を、創造産業に従事する中小企業(SEMs)向けのライセンス供与におけるベストプラクティス促進を目的とした「APEC(アジア太平洋経済協力)ワークショップ」に参加するよう招待しました。また、同ワークショップでは、APECのIPEG(知的財産権専門家グループ)という枠組みの下、メキシコや韓国の知的財産事務局も招待され、中小企業のためのIP施行強化と紛争解決の強化方法についてのトピックが取り上げられました。
中国
インディーズ・レーベルが放送用録音権の保護対象を求め政府へ陳情
地元インディーズ・レーベルの10社超が、放送用録音の権利を保護の対象とするために著作権法を改正するよう政府に陳情するフォーラムで声をあげました。前述のインディーズ・レーベルらは、現在の市場動向の下、従来型の小売販売でインディーズ・レーベルが生き残っていくことは厳しく、なおかつ各ライセンサーが適正なロイヤルティ報酬を享受できるほどデジタル市場が成熟していないと主張しています。
中国のIT企業、テンセントと大手レーベル/出版社が独占的契約を結んだことで、政府がデジタル市場における敵対的競争に関心の目を向けています。テンセントとこの契約を結んだレーベル/出版社の一部が、自社の姉妹レーベルをテンセントのオンラインゲームアプリに付与しようと、第三者である共同出版社に接近中であることが判明しています。 ただし、姉妹レーベルの作品の一部は、オンラインゲームアプリとして承認されない可能性があることも既に明らかとなっています。
台湾
インフルエンサーの映像投稿行為について検察官が著作権侵害を主張
最近、台湾特許庁(TIPO)が一般市民に対し、著作権で保護された素材の全部または一部をインターネットのフォーラム上に投稿する際の著作権上の法的責任について注意喚起を行いました。今回の注意喚起は、あるKOL(インフルエンサー)が 映画映像の一部を合成し、連続で投稿し続けた件で、地元で論争となった後、行われました。投稿を行ったKOLは、フォーラム上に映像の一部を投稿し、映画に関する自分のコメントを引用していたのだと主張しましたが、彼の投稿した映像は他の映像と編集・合成されていたことが明らかだったため、その主張は否定されました。
さらに、そのKOLは、自身の収入を得ることを目的に、収益型の広告フォーラムに映像の一部を投稿していました。地方裁判所の検察官は、 同氏の起こした侵害行為は3年間の懲役および罰金75万台湾ドル(2万5千米ドル)に値すると主張しています。