ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia) 2018年8月31日付

2018年8月31日付

ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)

香港

老舗大手レーベルが清算手続き、新たな体制へ

 過去7年間解消されずに続いてきた地元大手レーベルCrown Recordの清算手続きが8月初旬に完了しました。発表によると、新たにCrown Music EntertainmentとCrown Music Publishingが設立され、Crown Recordの保有資産だった録音録画権および出版権をそれぞれが継承しました。Crown Recordは1950年代に設立され、広東語ドラマを多数製作し、同ドラマ市場を席巻。70年代前半のCrownは、広東語の現地ポップソングを売り出す数少ない先駆的レーベルの一つでした。こうしたポップソングは、TVBの有名テレビドラマで使われるテーマソングが大半でした。初期の広東語ポップソングは、中国の楽器で編曲、演奏されており、メロディックで歌詞がわかりやすいことが特徴です。その後、広東語ポップは欧米や日本の音楽に影響を受け、この2つの流れのポップソングが大量に作られました。

新規テレビ局、積極的にドラマやタレントショーの放映を開始

 2015年秋に発足したViu TVは、開局以来、旅、トークショー、エンタメライブ番組の製作に特化してきました。しかし、Viu TVはここ数ヶ月でドラマやタレントショーもスタートさせ大手レーベル所属アーティストが多数同局に出演し、演奏しています。これにはテレビ局最大手のTVBも注目し、以来、自社製作によるドラマや中国から取得したドラマの放送を増やしているほか、自局テレビドラマのテーマソングのプロモーションにも努めています。

中国

テレビ局とのシンクロ権契約交渉、料金の折合いつかず

 現地のテレビ局が放送するタレントショーはさまざまな形に多様化してきています。出版社は制作会社に対しシンクロ権契約の交渉を試みてきました。しかしライセンス料金の折合いはついていません。制作会社によっては画一料金を設定してほしいと望むところもあります。制作会社は、異なる料金を支払ってもMFN(注:料金を最高額に合わせること)に則り、出版社から追加料金を求められるのではないかと懸念しています。その結果、契約の大半は料金論争を理由に保留になったままです。さらに、テレビ局のほとんどが制作会社にシンクロ権契約問題の解決を頼っているため、出版社と制作会社でこの問題を解決できなければ、テレビ局にこれを解決させるのは困難です。

マレーシア

協会運営を不安視、出版社が緊急会議を呼びかけ

 政府指令により開始された包括的CMO(著作権集中管理団体)であるMRMの運用が始まって1年以上が過ぎました(MACP、録音録画協会RIM、上演演奏者の権利グループPRISM)。上演演奏ロイヤリティの徴収制度が変わり過渡期となったこの期間中、ロイヤリティ収入は大幅に減少しました。現地アーティストからは不満の声があがり、ロイヤリティ縮小は協会の責任だと憤る向きもあります。さらに不透明性を理由に、一部現地出版社の中にはすでにデジタル権をMACPから引き上げ、独自にライセンス契約を結んでいる例もあります。
 これにより関係者の緊張感はさらに高まりました。またMACP事務局の運営全体も最上層部と出版社のポストの一部が空席となり揺らいでいます。以来、協会を統率できる人材はほぼ現れず、予定されていた年次総会も無期延期の状態。同地域出版社は、こうした重要な問題に対処すべく緊急会議を開くよう地元出版社に呼びかけています。そして協会が空席のポストを埋め、年次総会をできるだけ早期に開催できるよう、必要な手段を取ることを望んでいます。

インドネシア

出版社、現地でのライセンス取引でWAMIと協力

 インドネシア政府は今年前半、集団ライセンスの供与はWAMI(インドネシア演奏権協会)のような現地協会に担わせると通告しました。同政府は海外でのライセンス取引や商業取引が現地で行われていないことに懸念を示しています。こうした観点から同地域出版社は、複数のライセンス取引でWAMIと協力してきており、今後デジタルライセンスに向けて協力体制をさらに強化していくと述べました。

ライタープロフィール
j-ho

ジョナサン・ホ
香港を拠点とし、1986年から音楽業界で活躍。1998年フジパシフィックミュージック東南アジア支社長。2007年から香港著作権管理協会(CASH)理事、香港音楽出版社協会会長。東南アジア地域の音楽出版社の集まりであるアジア音楽出版社協議会(AMPs)理事長でもある。