2018年12月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
HMVが全店舗を閉店、地元レコード会社に打撃
2018年、香港HMVは全5店舗の閉店を発表し、12月18日にリアル店舗での小売事業を終了しました。HMVはレコード業界が全盛期を迎えていた1994年に香港に上陸、1995年には旗艦店がオープン、九龍半島南端の主要ショッピングエリア尖沙咀の一等地に4つの大型店舗も開店しました。2000年代半ばに市場がデジタル時代を迎えると旗艦店は閉鎖され、売場面積を大幅に縮小し移転しました。以来、HMVはその業態を変化させ、音楽関係の幅広い商品を取扱うようになりました。2015年にはカフェ、書店、ファッションブティックなども併設したマルチエンタテインメントスポットに生まれ変わり、香港島の主要ショッピングエリア銅鑼湾で3フロアを占める店舗を展開しました。しかし2018年はHMVにとっても地域の少数のレコード店にとってもチャンスに恵まれない年となりました。リアル店舗でのCD販売はデジタルストリーミングが優勢な音楽市場ではもはや競争力を失っています。HMVの閉店は地元のレコード会社にとっても打撃でした。
レコード業界の低迷とは対照的に、香港と中国本土各都市間の高速鉄道の開通、香港-マカオ-珠海 (マカオに隣接する中国南部主要都市)を繋ぐ大規模橋の開通が強い追い風となって、小売業全般はますます活況を呈しています。この2つのインフラにより、本土からの訪問者の数は急増、それに伴い小売業界全体の利益も大幅にアップしています。2019年には観光客増に対応して開業する店舗やレストランも増え、収益増も予想されています。
中国
政府がショートフィルムクリップ市場を監視、著作権保護強化に乗り出す
中国著作権局はさまざまな政府部局と協力して、台頭しつつある、著作権のある映像や楽曲を使用したショートフィルムクリップの市場に対する監視を進めると発表しました。同局は特に、事前同意なしにコンテンツが利用されたり編集されたりするケースについて、第三者の著作権の保護強化を進めるよう強く主張、またショートフィルムクリップを扱うアプリを提供する企業には、著作権者からの許諾を求めて早急な対応を取るよう注意を促しました。
フィリピン
FILSCAP、CASH、音楽出版社が国内のデジタルライセンス業務で協力
FILSCAP(フィリピン音楽著作権協会)、CASH(香港音楽著作権協会)、国内音楽出版社が集まり、フィリピン国内での正当な販売取引による課税所得におけるデジタルライセンス供与を巡る問題解決のための会合を持ちました。政府はデジタル市場が拡大し、そこでデジタルサービスを開始する国外の事業者が急増していることに注目しています。しかし彼らの多くはグローバルライセンスによってサービスを展開し、国外で使用料を支払っているようです。政府は、国内での全ての商行為は各地域認定の団体の許認可を受けて行い、確定された税金を支払うべきであると度々主張しています。これを受け会合では、FILSCAPがライセンス供与業務全般をカバーし、CASHが使用料処理機関の役割を果たし、国内出版社はFILSCAPと共にライセンス供与業務にあたる、という解決策が編み出されました。
タイ
MCTと音楽出版社がテレビ番組での楽曲利用におけるシンクロ包括許諾を協議
MCT (タイ音楽著作権協会) と国内音楽出版社はテレビのドラマ、バラエティー番組での楽曲利用に関する会合を持ちました。個別の楽曲のシンクロ権料が高く、使用申請手続きも煩雑であることから、国外や第三者の楽曲が利用されるケースは非常にまれであることが注目されています。この状況を解決するため、出版社は、シンクロ権の包括許諾がライセンサー、番組制作会社/テレビ局双方にもたらす利益について説明しました。さらに、シンクロ権の包括許諾をするとより多くの楽曲をテレビ局に提供でき、PR効果を上げる役割が果たせると述べました。この方法を取れば国外や第三者の楽曲利用が増加し、当然MCTの使用料収入も増えることになります。