2021年2月28日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
大手テレビ局TVBの音楽事業
2月上旬、大手テレビ局TVB(無綫電視)の上級管理職に人事異動がありました。新しくアシスタントゼネラルマネージャーに就いたエリック・ツァン(Eric Tsang, 曾志偉)氏は、様々なメディアで出演実績のある有名な俳優、そして司会者でもあります。ツァン氏は職に就くと同時にTVBの音楽事業を見直し、TVBと主要なレコード会社との対立関係を即座に解消しました。過去10年の間、TVBは独自のレーベルと出版社を運営し、自社のドラマ作品に提供する音楽を完全に内製化してきたのです。そのため、他の歌手やアーティストがTVBの音楽番組やドラマに出演することはめったにありませんでした。
またTVBは、IFPIの「The Music Must Go」キャンペーンに協力することを記者会見で発表しました。このキャンペーンは、香港政府が地元の歌手やアーティストに120曲分の制作費を助成するプロジェクトです。このようなTVBの新たな動きは、香港のレーベルやメディアに業界を後押しするような多くの協力関係を生み出し、より多様な音楽市場を着実にもたらすことになるでしょう。
世論に慎重なViuTV
オーディション番組「King Maker」(原題「全民造星」)の成功により、ViuTV(香港電視娯楽)はエンタテインメントと音楽関連の番組にさらに注力するようになりました。ViuTVは、若い世代向けのテレビ局と捉えられており、最近、警察のことを描いた自社制作のドラマの放送を打ち切りました。これは、ViuTVは警察に関するドラマを放送すべきでないと、多くのファンやフォロワーに公の場で訴えられたためです。これに対しViuTVは、そのドラマを直ちに打ち切りにすると発表しました。このViuTVの対応については議論の余地がありますが、これはViuTVがスポンサーに配慮したためと思われます。なぜなら、2019年に起きた香港の社会問題で賛成派のことも反対派のことも報道していたことから、TVBが政府を支援していると見なされ、TVBの多くのクライアントがViuTVに乗り換えていたからです。当時、TVBにCMを出す製品やブランドの不買運動がネット上で起きていました。
中国
堅調な著作権収入を後押しするMCSC
著作権管理団体のMCSCは最近ウェブサイトを更新し、楽曲の検索、許諾料、ニュース、会員登録などの情報や機能を追加しました。また、MCSCは2020年に2年連続で4億元(約6,200万米ドル、約67億円)を超える収入があったと発表しました。このうち主な収入源としては、配信が54%、興行が29%、放送が11%となっています。昨年前半は興行関連の収入がほぼゼロにまで落ち込みましたが、後半にかけて回復したとしています。政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制することができており、ほとんどの場所で営業が再開されている状況です。MCSCは、国内の音楽市場を活性化させるために様々なセミナーやイベントを開催しています。
フィリピン
FILSCAPが国内の音楽配信を促進
著作権管理団体FILSCAPと連携することにより主要な楽曲配信サービスへのライセンスが成功していることを受け、いくつかの音楽出版社は、国内にある他のエンタテインメント関連のサービスへと提携を拡大しました。2018年の後半にフィリピン政府は、いかなる経済的権利の集中管理は政府から承認を得た管理団体、つまり音楽著作権ならFILSCAPのような団体が行わなくてはならないと発表しました。これに関連し、配信サービス側の処理を容易にするため、国内の音楽出版社は、演奏権と複製権を含む一体的なライセンスができるよう、FILSCAPとの包括契約に合意しました。
ベトナム
VCPMCと音楽出版社との交渉が継続
国内の音楽出版社は、デジタルのライセンスに関して著作権管理団体のVCPMCと交渉してきました。そこで内国曲の許諾料が、外国曲に比べて比較的低いことがわかりました。これを受け音楽出版社は、海外と国内の両方の楽曲使用を促進するために、VCPMCと包括契約ができないか交渉しています。