2021年12月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
再び動き出した著作権法改正への道
2014年に否決された著作権法改正案は、最近また採択に向けて動き出すことになりました。諸外国に合わせて公衆送信権を定義した改正案は、言論の自由を抑圧するとして2014年に野党から強い反対を受け、見送りになっていました。音楽業界としては、著作権者の権利を守るにあたって曖昧にすべきではない、替え歌に関する使用料免除の条項が焦点になっていました。今後MPA香港は、この免除条項が音楽出版社の許諾業務の障害になるという懸念を意見書にして、政府の知的財産局に提出する予定です。さらにMPA香港は、著作権の問題と言論の自由に関しては、それぞれ独立した問題であることをインターネットのユーザーに向けて明らかにしました。
改正案における音楽出版社の懸念
今回の改正案は、前回のものと比べて内容の変更はありません。本改正案の内容は一般公開され、3ヶ月間にわたり国民から広く意見を聴取しました。音楽出版社は、著作物を無断使用する可能性があるユーザーに抜け道を作ることにもつながるため、替え歌の使用料免除については依然として懸念を抱いています。さらに音楽出版社は、近隣の東南アジア諸国の著作権法を調査し、それらには替え歌に関する使用料免除の条項が含まれていないことを明らかにしました。音楽出版社は、替え歌の使用料免除については、同じ立場を一貫しています。
映像配信サービスにおける権利処理の問題
ある世界的な映像配信サービスから、著作権管理団体CASHや音楽出版社に対し、シンクロナイゼーションや録音権の権利処理がされたとするコンテンツを香港で配信するにあたり、演奏権の利用について許諾申請がありました。しかし、香港の独立系の出版社は、こういった権利処理は、自分たちの管理楽曲は含まれていないものだと考えました。しかし動画配信サービス側は、全世界においてシンクロ処理がされたと主張し、CASHが出版社側から提案のあったシンクロ使用料より少し減額して提示したにも関わらず、演奏権のみの許諾を要求しました。
中国
80年代の音楽の流行と政府の意向
昨今の80年代を舞台にした多くの映画の成功により、北京語や広東語の往年のヒット曲など、80年代の楽曲が流行しています。これは、巷に溢れる過度に営利的なコンテンツや、台頭するKOL(Key Opinion Leader)について注意喚起をしていた政府が、文化的で正確な情報を提供するようなコンテンツを促進した結果でもあるといえます。
台湾
業界横断的に観光業を後押しする政府
偶然にも、中国と同様に80年代が舞台となった映画やテレビドラマが人気を集め、80年代のポップスが再燃しています。政府は、地方文化の発展を促進するため、文化的なコンテンツを多く制作するようエンタテインメント業界に働きかけています。このため、文化の発展のために使用される音楽については、著作権使用料の料率を低くするように要請されています。地方文化への興味を喚起し、台湾の観光業を後押しするための施策といえるでしょう。
マレーシア
管理体制を強化するMACP
以前政府が指定していた権利の一括処理ができる著作権管理団体からMACP (Music Authors’ Copyright Protection) が楽曲管理をするようになって2年が経ち、許諾業務と分配システムが従来の軌道に戻ってきました。MACPは最近、国内の会員社や関係団体の管理楽曲に関する演奏権や公衆送信権の許諾窓口であることを明確にするべく、声明文を発表しました。これは、楽曲の使用者がMACPを通さず、関係のない代理店などから演奏権や公衆送信権の許諾を得ることができるという噂があったためです。