2012年8月31日付
ジョナサン・ホ(フジパシフィックS.E.Asia)
香港
iTunesが配信市場を刺激
6月27日のiTunesの開始以来、地元レコード会社は70年代から90年代のいわゆる広東ポップの黄金時代に作られた楽曲の廉価版アルバムをiTunesストアに積極的に提供している。例えば30曲入りがHK$58(米ドル$7.4)で売られている。
楽曲単位のダウンロードの価格は、新しいか古いかにより、HK$6~8位で売られている。iTunesストア開始にあたって大げさなメディア宣伝はなされなかったが、すでに香港のみならず他の東南アジアの配信市場を十分に刺激している。
ビザ不要政策が著作権使用料増大に貢献
約5年前に中国政府が特定の地域からの香港への旅行にビザを不要とする政策を発表して以来、香港小売業は徐々にその影響を受けてきた。またそれら中国本土からの旅行者の需要に対応するためのファッション、家電などを中心に新しい大小のショッピングモールの建設が進んできた。その結果、CASH(香港著作権管理団体)は店頭で使用される楽曲のライセンス料の増大の恩恵を受けてきている。今後更に中国政府はビザ不要の地域を拡大すると予測されており、香港小売市場の更なる拡大が期待されている。
台湾
新曲PRの手段にドラマタイアップを強化
香港におけるTVシンクロの包括ライセンスの成功に刺激を受け、台湾の音楽出版社も同様なアプローチを台湾において実行しようとしている。現在、レコード会社は新曲宣伝の手段としてドラマタイアップを狙って働きかけを強化している。同時にレコード会社はTVドラマに使用された楽曲に対して音楽出版社に対してシンクロ料を支払っている。
他方、背景音楽についての関心はあまりなく、それは香港の昔の問題を再び台湾で体験しているようなものである。特に、当該TVドラマが海外で流される場合は、TV局の主張する包括ライセンスに含まれるという主張は意味が無くなる。従って音楽出版社は、新曲と同様な包括ラインセンス交渉を検討する時機ではないかと考えている。
中国
正規サービス開始のチャンス
香港ストリーミング大手Moovは、中国進出の第一歩として香港と同じ広東語を話す約1億5000万人が住む広東州を中心とする中国南部を対象としたサービスを開始した。
さらに、中国の配信市場はその海賊版の問題で常に国際的な関心事になっているが、地元経済が成長しつつある今、中国における(正規)サービスを立ち上げる良い時期というのがMoovの判断である。
Moovが香港で成功したのは主に独占的なアーティストレヴュー、音楽ビデオやコンサートを含むプレミアムサービスによるものである。